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date 2015.10.7
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谷口広樹個展「猿と花」@U1 SPACE

谷口広樹個展「猿と花」@U1 SPACE

既に会期終了となってしまいましたが、薩摩川内市隈之城にあるイラスト専門のギャラリー「U1 SPACE」にて、谷口広樹さんの個展が開催されていました。丁度、僕が高校生で美術予備校に通っていた頃、いわゆる「芸大旋風」というムーブメントがあったんです。伊勢丹美術館で「七福神展」という、まだ芸大大学院に在学中(あるいは卒業したばかり?)というメンバーが集まったグループ展にも出かけた記憶があります。この当時の空気を今説明するのは至難の技なんですが、グラフィックデザインやイラストレーション、広告、そうした世界で輝いている人たちが沢山いたんです。その中でも、日比野克彦氏はNHKの「YOU」の司会をしていたこともあって、若者の間ではヒーロー的存在でした。そんな空気の中で、日比野氏と並べて語られていたのが、谷口広樹さんなんです(当時は谷口康彦)。段ボールアートという言葉に象徴されていた日比野氏のポップな作風に比べて、谷口氏の作品は、和テイストもあり、どこかしっとりと落ち着き払った空気を孕んでいました。かと言って完全な大人向けというわけではなく、画面の隅々にまで細かく散りばめられた遊び心が、当時の高校生にはガツンと響いていたんです。当時、そうしたスターたちを輩出した「日本グラフィック展」や「イラストレーション展」といった公募展には、もちろん自分もチャレンジしていました。一度、準入選にひっかかった事はありましたが、狭き門に当時はいろいろと悩まされたものです。写真の雑誌「イラストレーション」も、もうかれこれ30年ほど前のもの。「どうしてもこの世界で仕事がしたい」という気持ちで(興味のある記事のみ)、穴が開くように見つめたり、読んだりしたものです。
今回の個展は、そんな当時の空気を思い出させてくれた素晴らしいものでした。谷口さんの原画も久しぶりに観ましたが、同じ画面に様々な手法を多用しつつ、さらりとまとめ上げており・・・さすがだなあ・・・と会場を3周ほどして観察してしまいました。昔のような空気は、人々の興味が細分化してしまって、もう戻って来ないとは思いますが、自分で納得の行くような何かを作り出したいという気持ちは、昔と変わっていません。

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