在り方
以前、展覧会の会場で「あなたは誰のために絵を描いてるの?私は自分のために作ってる」という話をされたことがあるんです。多分、デザインという作業はクライアント(依頼主)のために作っているという視点からの発言だったのだろうと思います。依頼主は顧客との関係を求めているので、両者を結びつけるために存在している仕事なんだろうと思います。一方で、アーティストは自分がクライアント、っていう話を良く聞くのですが、実はデザイン以上に営業力が必要だし、ハイアートになればなるほど、お金もかかるし、人を説得して作らなくてはいけませんよね。僕はクライアントのためにイラストを描くのですが、それと同時に自分のために描いているとも言い切れるんですよね。もちろん、その企業や、顧客(訴求対象)のことを考えて描くんですが・・・。自意識と社会との境目は曖昧かも知れません。
何を言っているのか分からなくなってきましたが、先日、たまたま観たNHKの番組で「コンビニ人間」(第155回芥川龍之介賞受賞作品)の作者である村田沙耶香さんのインタビューでハッとさせられたんです。細かい言い回しは覚えていませんが「私(作者)は小説の奴隷になる」という内容でした、小説の枠組みで出来ることならなんでもやる、という意気込みの感じられる力強い言葉だったんですね。たまたま、自分はこの小説を読んでいたので、より言葉の意味が重く感じられました。オススメの作品なのでまだの方は是非ご一読を。
この言葉を借りるのであれば「自分はイラストの奴隷である」という言い方が出来ます。自分とか他者ではなく、その在り方に帰属していたいという気持ちが強いのだと思います。