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date 2006.10.3
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連載小説・昭和の高校生 第二回


(前回までのあらすじ)
薫子に笑われないよう、TDKの高級テープを買った牧夫だったが・・・。
***
牧夫「これに頼むよ」
薫子「あら〜SA-Xじゃない。随分と奮発したわね。」
牧夫「え?そ、そうかなあ・・・」
(そう言いつつ、内心ほっとする牧夫)
薫子は家に帰り、「ゼニヤッタ・モンダッタ」をターンテーブルに乗せ、録音のための試聴を始める。3曲目「君がなすべきこと」あたりで、牧夫のSA-Xのパッケージを破り、カセットデッキの中へ入れる。クロームテープなのでハイポジションのボタンを押す。牧夫からは「ドルビーはかけないで」(※4)と言われているのでノイズリダクションはOFFに。テープを録音状態にして、キャリブレーションを調整、その後、バイアスのつまみを回して適正なレベルを見つけ出した。(※5)
「これでいいわ」
次に録音レベルの調整だ。曲の中で、最も大きな音がするであろう部分に合わせて、録音レベルのつまみを右〜左へと回す。
「このあたりね」目盛りの位置を記憶する。ここまでの作業は試運転の様なもの。
レコードから針を上げて、カセットテープも巻き戻す。多くの人は、デッキの小窓からリーダーテープが全て巻き取られた事を確認し、一時停止の状態で針が落ちるのを待つ。しかし薫子は、「デッキはテープを走行させてから4秒以上経たないと回転が安定しない」そう父から言われていたので、その方法には不安を感じていたのであった。
その結果、エアチェック(※6)の場合は仕方ないにしても、レコードから録音する場合は一時停止の動作を挟まない事、これが薫子にとってのいつもの儀式となっていた。
針がレコードに振れる「プチッ」という瞬間が、最初の4秒あたりに訪れればひとまず成功だ(リーダーテープはおよそ4秒ある)。ということは、4秒を越えれば一曲目が始まっても構わない、そう考えるのが普通だ。しかし薫子は次の4秒にも空白を作りたいのだった。何故、薫子は更に4秒が必要なのか?
(続く)(いや、続かないかも・・・)
(※4 ドルビー研究所が開発したノイズ低減システム。その効果については好き嫌いが分かれた)
(※5 キャリブレーションとバイアスの調整が出来る機種は限られている。薫子が所有しているモデルは、無論据置型。しかも3ヘッド搭載の本格的なデッキと推測される)
(※6 主に、FMからの録音の事を指す)

Comments: 8 comments

  1. 薫子さんは実在の人物ですか・・・?
    こんな女子、田舎にはいませんでした・・・。と、都会ですね。
  2. ゐの字

    機械ものに強い女性の陰には男の存在が感じられます、それが元彼なのか兄なのか〜。薫子クンの場合は早々にお父さんと分かり読者も安心ですな。 がんばれ牧夫!
  3. テープ話で思い出したのが、デッキのポジションの選択。
    僕は日立Lo-Dのデッキを使っていたのですが、
    フェリクロームポジションは最高級テープ(メタル以前)
    だったので、録音する時に気合を入れて
    薫子さんのようにアレコレ気を使って録音していました。
    しかし日立マクセルにはフェリクロームが無かったような・・・
    メタル出現後メタルポジションの無いデッキで
    思い悩んだ覚えもあります。
  4. はなさん→
    こんな女子は都会にもいないと思いますよ!しかしながら、こういう種類の気遣いなくしては、LPをカセットに録音出来なかった時代だった事は確かなんです。それは、都会とか田舎とか、そういう問題ではなく、全国共通の技術的な問題だと思います。
    ゐの字さん→
    ん〜。深読みしてますね。そこまで大袈裟な話ではないんですよ。何と言っても今日、完結ですから〜!(予定。)しかし、読者として牧夫に感情移入しはじめてしまっているオレ!長編になるのか?
    Sputnik→
    Lo-Dというだけで、もう独特の雰囲気が伝わってきます。
    ノーマル、クローム、フェリクロムという表記は、その後TYPE 1、2と簡略化されましたね。フェリクロムって、何だか好きだったな〜。孤高の存在感たっぷり。確か、Sonyの「DUAD」というモデルが代表格でしたね、他の存在は記憶にありません。メタルが出た時、確かに「デッキ買い換え時期か?」とみんな悩んでいました。
  5. よしみーん

    カヲルコはヲタのパイオニア・・・・あ、いや失礼しました。しかし薫子のキャラ、素直にすんごいナァ〜(爆)え?まだ物語は序の口だった?
  6. カセットというと、やはりラジオのエアチェック、でしたね、当時は。
    テレビのアーカイブスはあるのに、みんなの青春時代に聞いたラジオ番組のアーカイブスってあってもいいのになぁ、と思う昨今。
    がんばれ、青少年たち!
  7. エアチェックのときテープを入れて曲紹介が終わって好きな曲が録音できる楽しみは格別でした。
    好きな曲に限って、テープが折り返しになり「ガーン」となっていました。
    夜の8時ぐらいからやっていた神谷明のベストリクエストで情報を仕入れていました。
    あれ、神谷明ってキン肉マン???
  8. よしみ-んさん→
    薫子のキャラ、そんなにヲタっぽいですかね?僕には良く解らないんですが、多分、当時・・・もしLPの録音を頼んだとしたら、これに似た行動を取らざるを得なかったと思うんです。
    Tessyさん→
    Tessyさんって、エアチェックの匂いがします。イイ意味で!クロスオーバーイレブンの一件が大きいと思いますが、やはり世代ですねえ〜!
    アグリさん→
    テープが折り返し・・・という事はオートリバースデッキですね。若いなあ。僕らの世代はオートリバース感覚が解らないんですね、とにかくA面、B面と手でひっくり返す。それに、神谷明といえば、やはりバビル2世なんです。