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date 2006.10.2
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連載小説・昭和の高校生 第一回


薫子と牧夫は、都市近郊のとある高校に通う17歳。吹奏楽部で知り合った仲である。
二人とも洋楽好きで、FM雑誌(薫子はFM-STATION、牧夫はFMレコパル)やベストヒットUSAで得た情報を交換している。
薫子「ザ・ポリースの新作買っちゃった〜!」(※1)
牧夫「え、ゼニヤッタ・モンダッタ?」
薫子「そう」
牧夫「録音してくれる?46分テープでいいかな?」(※2)
薫子「大丈夫だと思うよ」
牧夫は学校の帰りにディスカウント・ストアに立ち寄り、カセットテープコーナーへ。
ソニー、マクセル、TDK、FUJI・・・きらめくパッケージが並ぶ中、どのテープに録音してもらおうかと長い時間をかけて物色。「ど・れ・に・し・よ・う・か・な」。ついに手にとったのは、TDKのSA-Xであった!
以前、薫子にSONYのBHFを手渡したところ、「フッ」とあざ笑うかの様な姿を確認した事があったのだ。
もしかすると、ただの思い違いかも知れない。しかし牧夫は思春期真っ只中、些細な出来事と自己陶酔とが連鎖反応を起して、ややこしい人柄を作り上げていたのだった。
「くそ〜っ、薫子はオーディオにウルサイからな、もうノーマルテープを渡すわけにはいかない」
(というよりも、薫子に対してほのかな恋心を抱いており、ケチな男とは思われたくないという一心が牧夫の背中を押したのだった)
(なんだこの連載?)
牧夫はレジへ向かった。クロームテープの最高峰SA-Xを握りしめて。(※3)
街はオレンジ色に染まっていた。「SA-Xをカバンの中に入れて、今、オレは自転車を漕いでいるぞ!」心の中でつぶやく牧夫。帰宅するまでの十数分、SA-X、薫子、夕日の順番で風景がオーバーラップしていた。
(続く)(いや、続かないかも・・・)
(※1 発音は小林克也の影響を受けている)
(※2 46分テープはLPの平均的な収録時間に合わせて開発された)
(※3 SA-XやMA-XはTDKのフラッグシップモデルで、FM雑誌に載っていた広告も、まるで外車を宣伝するかの様な、高級感溢れるものであった)

Comments: 9 comments

  1. テディ

    これは私小説ですか・・・。
  2. 私小説ではないですね・・・。こういう雰囲気の中で学生生活を送っていた事は確かですが・・・。
  3. うわ、ついに文筆業開始ですね!
    出版の際にはぜひ装丁させてください。イラストは誰に依頼しようかな〜。
  4. ゐの字

    朝の連続小説終わったと思ったら、こっちで新番組が!
    (「純情きらり」見てなかったけど)
    1本のCカセ(コンパクトカセット)をきっかけに、
    あんなコトやこんなコトが起こるんでしょうね〜。
    甘かったり苦かったり、しょっぱかったり、すっぱかったり〜。楽しみだなぁ。
    (タイムスリップで父親の恋の手助けをして、サイボーグに追われ、
    木星付近で未知のエイリアンと第三種接近遭遇、新たな希望を残して終わる予感〜)
  5. 僕はレーベル目当てにFMステーションを買いつつ、FMファン派でした。そしてカラーページでオーディオルームの特集があったときはレコパルも。これでお小遣いがなくなった記憶が…。懐かしいです。
  6. TDK/SONY/MAXEL皆必死で悩んで買っていましたよねぇ!
    今ああいったこだわりって残っているのかな?
    お金の無い学生の頃の真剣さ、取り戻したいもののひとつです。
    ドゥドゥドゥデダダダは愛の言葉さ~♪
  7. 中学生のころ,エアチエックのためにFM-STATIONをめくる時,うきうきしていました。
    そんなうきうき感を,自分のHPアグリステーションを見る人と共有したいと思いHPの題名にしました。なつかしい。
    ボンジョビ,シンデイローパー,カメオ,A-ha,ワム,
    ワンチャン,ヒューイルイス,マイマミ・サウンド・マシーン ,TOTO あーもう忘れたー。
    鈴木英人氏のカセットレーベルも毎回楽しみにしていました。
  8. よしみーん

    >薫子と牧夫は、都市近郊のとある高校に通う17歳。吹奏楽部で知り合った仲
    わ〜!!!この書き出しですでに、昭和の香りがプンプン。(≧◇≦)次回が待ち遠しい。
  9. はなさん→
    いやあ〜参ったな〜。
    これ、遊びなので期待しないで下さいね!(真面目に答えてしまった・・・)イラストは、はなさん、デザインはマティックという逆のパターンで行きますか!
    ゐの字さん→
    うわ〜SF映画・アニメ・文学てんこ盛りのストーリーですね。そこまでこの話が発展しますかね〜?明後日、完結!(早い?)
    cutさん→
    キマシタ・キマシタ!FMファン・・・って、オーディオ寄りというか、ヘタするとラジオ無線をしている様な人が読むような、本格的な香りがしていませんでしたか?ポップスよりはクラシックという様な・・・。cutさんのルーツを見たり。FM雑誌って、200円程度だったので、中高生のお財布でも何とかなった。そこが良かったですよね。
    Sputnikさん→
    やはりそうでしたか!テープ選びって、本当に楽しかったですよね。ソースが悪いとそれなりのテープを選ぶし、大切な録音にはちょっと見栄を張って、という感じで・・・。デジタルは、そういう楽しみを奪ってしまいました。
    アグリさん→
    アグリステーション・・って、FM-STATIONからきていたんですね!それはそれは!やはりあのカセットレーベルは特別な意味を持っていましたね。雑誌自体も大判で、番組表もカラーで見やすかったのを記憶しています。
    よしみ〜んさん→
    確かに昭和っぽいですよね。昭和が終わって、もう20年になる訳ですから、高校時代の出来事を描写するだけでレトロモノになってしまう。ん〜歳取ったな〜。