連載小説・昭和の高校生 第三回
(前回までのあらすじ)
牧夫から預かったテープに、ポリスの新譜を録音する薫子だったが・・・。
***
何故、薫子は更に4秒が必要なのか?
「リーダーテープが終わり、テープ自体の品質が安定する箇所に到達するのも、更に4秒くらいかかる」そう信じているからである。まるで食品添加物にうるさい自然派志向の主婦の様に、薫子のカセットに対してのこだわりは並大抵のものではなかった。ここまで薫子を駆り立てたのは吹奏楽部に所属するという一種のプライドからなのか、父からの影響なのか、それとも背後に何かの力が働いているのか。それは追って語ることにしよう。さて、録音本番である。
「ふ〜っ」と深呼吸をして、薫子は一連の動作を頭の中で組み立てる。緊張する瞬間だ。レコードプレーヤーの真横にぐっと顔を近づける。レコード針と、レコード自体の位置関係を微妙に調整、8秒後に曲が始まるような針の位置を、経験から推測するのだ。録音レベルを0に戻した後、デッキの録音ボタンを押し、プレーヤーの針を静かに降ろす。プチッという音を確認し、リーダーテープが巻き取られている様子が見えたら、今度は録音レベルのつまみをさっき記憶した目盛りまでゆっくりと回す!(*7)
まさに計画通り、一曲目「高校教師」が始まった!薫子は深くため息をついて、そっと椅子にもたれかかった。(*8)
(続く)
※7 スクラッチノイズがいきなり聞こえては格好悪いので徐々に録音レベルを上げる。タイミングを誤ると曲の本編がフェードインしてしまうので注意が必要だ。曲が終わったときは、逆にレベルを下げていくのが基本)
(※わずかな床の振動もレコード針が拾ってしまうため、録音中は体をあまり動かさない方がよい)
Tessy
2006/10/05 04:08
「ごはんだよ〜」とか、一階から、おかんの声がしちゃうんですよねぇ。
我々の時代、ステレオでエアチェックできる番組で、ヒット曲が掛かる
番組といったらNHK-FMいっぽんのみ。
月曜日から金曜日の「夕べのひととき」,
そして「サウンドストリート」(「若いこだま」の前身)。
もう必死で、録ってましたよ。ローカルってええなぁ。
Sputnik
2006/10/05 12:13
ありましたよね(笑)
文化祭のBGM選んでいて、皆で大音量で聞く時に
初めて気付くような・・・
「音楽ばっかり聴いてないで勉強しなさい!」
とか入ってると滅茶苦茶恥ずかしかったよねぇ(笑)
マティック
2006/10/05 23:19
テレビの音を、そのままラジカセで「生録」。ありましたよ、確かにそういう時代が・・・。Tessyさんの録りためたテープ、デジタルアーカイブ化を希望します。
Sputnikさん→
背後に家族の声がするテープ、イイ時代でしたね。友達のお父さんが「ラインで取る」事を伝授してくれて、テレビとラジカセをケーブルで繋いで初めて録音した時は感動しました。