ohtematic.com

news

date 2011.8.2
category news
tags
comments closed
RSS RSS 2.0

著作権の問題など

イラストレーターの仕事を20年以上に渡って続けている。作業に対して然るべき対価を得られる状態が続いているからだと言える。どれだけの人たちにお世話になっただろうか。名刺の数だけで言うと、3000人程度だと思う。僕はこれまで美術団体に所属した経験がないから、当然、著作権についても自分で管理してきた。最初は良く解らなかったが、見よう見まねで、或いは「イラストレーション」などの専門誌を読んだりして徐々に身に付けてきたと言ってもよい。基本的には「出版社や広告主側」と「制作者側」の誠意で成り立つものだと思っている。大きな仕事になれば、契約書をまず交わす。こちらの制作するものが、他の人の著作権を侵害しない事を保証するというのがルール。盗作が発覚した場合「出版社や広告主側」は多大な損害を被るし「制作者側」は志の低いものとして潰されるのが常識となっている。また、先週は「過去に僕が表紙を担当した書籍が電子出版される」事について、やりとりがあった。出版社側は、電子出版に関する新たな原稿料は派生しないという姿勢だった。原稿料について「通常二次使用料を頂くことにしている」という話をしたところ、出版社側も真摯に受け止めてくれ、支払われる事になった。電子書籍化については、これから細かいルール作りが決められていくと思われるので、ひとまず、こうした状況をきちんと報告してくれた事に感謝している。この不景気下で生き残りをかけ、出版・印刷業界は必死だし、僕の様なフリーランスも勿論同じ状況だ。そういう時代なので、今回の様な連絡をもらうたびに、自分が著作権で保護されている事を知るのである。日本での歴史は、アメリカの制度が下敷きになっており、1952年にレイモンド・ローウィーがアサヒビールのパッケージをデザインした際、デザイン料として320万円を支払った記録が残っている。細かい契約内容は解らないが、先人達が築き上げてきたルールの上に、僕の仕事も成り立っていると言える。そうした歴史を知らずして「知人だから、ただで」という風潮がまかり通れば、中国の様なパクリ文化、素人文化の下敷きが自然と出来上がり、世界から笑われてしまう結果となる。自分に厳しくなければ、結局は生活出来ない。国の文化レベルも下がる。どうか、若いイラストレーターの方々も著作権にはきちんと目を向けて欲しいし、二次使用料などの交渉はしていただきたい。主張する権利は当然ある。ここでいわゆる「買い取り」をされてしまえば、そのうち世の中に流通する全てのイラスト自体がフリー素材に成り下がってしまうからである。長い目で見ればイラストレーターという仕事はなくなってしまうだろう。
また、法律問題を抜きにしても、職能として、自らの技術を磨く事に専念し「腕一本で生活したい」という創作意欲自体が、このままでは萎える危険性が出てきている。
先日から話題になっている「カオスラウンジ」や「pixiv」の著作権に関する騒動は、僕が日常的に意識している問題とは真逆である。彼らの目的はそういうシステムを破壊する事だったのか?単なる意識の甘さなのだろうか。

Comments: 2 comments

  1. 著作権やギャランティに関しては、双方きちんと提示できるような関係性があることが望ましいです。
    ラフをみて頂いた上で「これくらい必要です」とはっきり言っていただければ、予算内だからもうワンカット頼めるな、とか、じゃ予算はこれくらいなのでここはデザインでクリアしようとか。

    正面切ってお金の話ができない方とは仕事は出来ない、と思っています。
    だって、みんな税金や年金払わないと。生活しないと。
    いい年をした大人が仕事をするということは、そゆことです。
  2. ohtematic

    はなさん→
    著作権は誰のものだ?という権利団体を非難する議論もありますけど、自分の場合は、基本的に個人のものだと思っています。
    お金の話が出来ない人って、おそらく、定職がある人なんじゃないでしょうか。そういう人たちは、そっちの方で頑張って頂くということにしないといけませんね。