南日本新聞「南点」を振り返る(01)
昨年、南日本新聞に掲載された「南点」(全13回)を振り返ってみようと思います。約800字という制限の中で言いたい事が伝わったのかどうか。新聞は読まなくなってしまった層に向けて、全文と補足説明を本ブログで紹介していきます。
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多極分散型社会へ!
東日本大震災以降、これからの日本のあり方が問われている。どこまでを「自分の問題」として捉えられるか。普段、日置市吹上町で暮らしている私にとっては、一極集中型社会から多極分散型社会への転換が最も身近な問題に感じる。私たちが暮らす鹿児島県でも、鹿児島市に人口が流出している。また、もっと小さな単位で言えば日置市の中心部が賑わい始めている。「便利だから」「仕事があるから」というのが理由で人が集まるのだろうか。昔は国土の隅々まで人々の暮らしがある多極分散型だったが、平成の市町村大合併も手伝って、どうやら「長いものに巻かれていれば安心」という空気は加速しつつある様に思える。
こうした流れに取り残されてしまう、いわゆる限界集落と呼ばれる地域は、人間の体に例えるなら手足の指先、毛細血管と呼べる繊細な場所だ。おろそかにしていれば、やがて鹿児島全体が壊死してしまうだろう。
これから県内全域を21世紀型の社会に再構築していくためには、こうした地域への定住を踏まえた、多極分散への意識を高める必要があるのではないか。ではどうするのか?私は、デザインの専門学校で週に一度イラストレーションを教えているが、未来のクリエイターである学生達へ「軸足を鹿児島に置いた上で、県外・国外との仕事をするスタイル」を提案している。自分の取引先が一極集中しているのでは、世の中は変わらない。数社、数十社から自由に仕事を得る事が出来れば、都市や中心市街地に呪縛される必要はなく、むしろ過疎化を辿る場所へ積極的に移り住んで自分の世界を築ける。デザインの分野に限らず、一般的な組織でも社長の英断で中心地のオフィスを縮小し、社員は在宅勤務へとシフトさせる事は今すぐにでも出来る筈。
まずは自分の感性を多極へと拡散していくこと。それが一極集中を変えていく第一歩なのだと思う。
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この話題は、移住してから徐々に自分の中で沸き上がって来た問題です。正直なところ「田舎暮らし」ってもう少し流行ると思っていたんです。確かに、田舎に移住した人は目立つ傾向があるから、そういう意味では追い風を感じることもある。だけど、全体の流れからすればまだまだ少数派なんですね。僕が一番言いたいのは「古民家で有機農業で」といったステレオタイプの田舎暮らしのイメージを持ってはいけないという事でしょうか。そういう、気合いの入った田舎のイメージが移住へのハードルを高くしているのでは。スーパーで野菜を買い、Amazonで書籍を取り寄せる様なヤワな僕でも、田舎暮らしが出来るということなんです。むしろ過度なストレスに悩むデジタルクリエイターはコンクリートジャングルに囲まれるよりも、緑の中で暮らした方がリラックス出来、発想も膨らむと思っています。















masanori
2012/01/04 08:11
今年も砂丘荘共々どうぞ宜しくお願いいたします。
”南点”を再度読めるなんて、私にとっては何よりのお年玉です。
大寺さんと同じ地区で仕事をしている立場として、ストレートに刺さる内容でした。
連載が終わってしまったのは残念ですが、鹿児島の今後へ一石を投じることになったような気がします。
pika
2012/01/04 09:57
鹿児島に軸足を置いて,多極分散化,今なら誰でもできそうなのに,この一極集中化の流れ,不思議ですね。。。
潜在意識的に変化を好まない気質が強いのでしょうか。。。日本人。。。
ohtematic
2012/01/04 14:27
あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
お年玉と言っていただけるなんて・・・!恐縮です。この連載は、ブログのネタを要約したような内容が多かったですね。どのあたりに共感して頂けるのか、或いは反論があるのか・・・など反響があるといいな〜と思っております。
pikaさん→
結局は、お金ということなのかも知れませんね。田舎でお金を生み出している様子がきちんと提示出来ていれば、どんどん田舎暮らしを選択する人も増える。もう、お金ではない筈なんですけれども。あとは、田舎で暮らしている多くのお年寄りは、どうやら子供に「ここで暮らしても仕方が無い」という教育をした様ですね。ですから、鹿児島出身者というより、都会育ちの若者の方がこちらに定住してくれる可能性の方が高いのではないかと思っています。東京に集まっているのは田舎者ばかりですから。いずれにしても今年が転換期になって欲しいですね。
TiK
2012/01/05 09:20
暮らしが変わって年号が変わって色々な事柄に触れると、Uターンした身としては、(名古屋暮らししていた)都会から、閉鎖的な土地に戻るとどうしても息がしにくいような閉塞感に逃げ出したいと思うこともありましたが、すっかり楽しんでいます。
大事な事って、きっと『あきらめ』とか『開き直り』も含まれますよね。
日本は一部地域だけが『都会』であとは『田舎』なのです。都会から見れば全て『田舎』で都会の人が求める郷愁感や景色の多彩さを求めている割にはIターンするほどでもないと思っている、ここも大事です。
昔は遊びなんて自分達で考えるものが今ではゲーム機で済んでしまう。
子どもより大人の方がハマって遊んでることにも購買層としても商品としても問題です。
商店で商いしてたのに大型ショッピングセンターに取って代わられ、そういう会社は地元経済に何も落とさない事へも疑問です。
経済価値を生むように全国から全国へ波及させる情報を生み、購入しようという機会を増やすことで経済動向も変わってきます。
雇用創出の為にも、本当に使う税金の使用先を開示し、納得できるまで議論する。
Lamborghini創立者フェルッチオ・ランボルギーニは成功の証にワイン農場を開き、ワインを生産したこともあるので、成功者は近親者の田舎へ移住させるなど見習える部分もあると考えて居ます。
手間や面倒を嫌う方はそのまま都会にいればいいですが、見直してくれる方の為に地域が応援して、定住化を計ってみることも、案外いいのかもしれません。
長文・駄文、失礼しました。
本年もどうぞよろしくおねがいいたします。
ohtematic
2012/01/05 13:34
田舎の風景がどこも均一化されているのは、本当に問題ですね。これなら東京の方がマシ、という考えになっていまいますよね。「田舎ならではの未来感」というのを創出していかないと、厳しいと思うんです。エネルギーや食糧の問題では都会より有利な状況にありますから、そのあたりを軸にして、何かを提示出来ないだろうか、といつも考えています。