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date 2012.1.10
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南日本新聞「南点」を振り返る(03)

南日本新聞「南点」を振り返る(03)

昨年、南日本新聞に掲載された「南点」(全13回)を振り返ってみようと思います。約800字という制限の中で言いたい事が伝わったのかどうか。読み逃した方々へ向けて、全文と補足説明を本ブログで紹介していきます。
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太陽とみどりのくに

 「思ったよりも都会だね」と、初めて鹿児島を訪れた友人に何度か言われた事がある。これは、どう考えても褒め言葉ではない。私たちが無意識に作り上げている街は、日本中のあちこちで見られる様式に引っ張られているのだろう。昔は、建築資材も現地調達・地産が大前提であったからそれぞれの地域に自ずと個性が出ていた。「選択の余地がないが故の美」と捉える事が出来よう。しかし現在では、流通システムの発達で過剰とも言える選択肢がある。日本中の都市が融解して混ざり合ってきている様にも思える。
 街作りを変えていくのは建築に限った事ではなく、個人のほんの小さな心がけから始まる。缶ジュースをひとつ買う時にも、鹿児島らしいものを「強く意識して」選択する。或いは全国的に流行しているものでも「風土に合わないのではないか?」と疑いを持つ。
 私たちは最南端で暮らしている事を、今一度胸に刻み込まなければならない時期に来ていると思う。確かに街はお洒落になったのかも知れないが、発展と呼べるのかどうか。近代化と均一化が混同されてしまった。観光客(県民も含む)が期待する鹿児島は、こうではない筈だ。もっと暑く、熱い場所でなくては!例えば中央駅前は鬱蒼とした森で、夜になると蛾が飛び交うイメージ。虫に刺されることも財産のひとつ。「温泉都市鹿児島」のネオン管が鮮やかだった観光案内所も復活させて欲しい。
 昔の観光パンフレットを見ると、そこには「南国の鹿児島」「太陽とみどりのくに」というコピーが誇らしげに躍っており、手に取るだけで魂の宿りを感じることが出来る。1972年の「太陽国体」関連の書籍でも「鹿児島らしさ」の鮮烈なイメージが見られるが、残念ながら現在は最小公倍数的なプロモーションが主体になっている。抗菌・草食系・事なかれ主義の今、それに背反する様な「生命力」を再び鹿児島から発信していけないだろうか。

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補足
これは、イラストレーションの訴求力が弱まっているのではないかと思い、自分の死活問題として書いたんです。勿論、自分の作品を「100点満点で素晴らしい」とは間違っても言えないけれども、ここのところコンペで写真案に負ける事が多い(この記事を書いてからも二回負けた)。泣き言じゃないんだ。自分には、現在発行されている様なパンフレットや観光ポスターよりも、イラストレーションを使った方が「より鹿児島らしさが表現出来る」という確信がある。勿論写真も必要になってくるけれど。今回の添付ファイルは「つばめ文庫」さんから拝借したもの(こういう観光案内が多数眠っていると思うので、是非お出かけください。)。素晴らしい!ですよね。昔が良かった!と言いたいのではなく、昔の人の方が鹿児島を伝えるために工夫していたと思えるのだ。そういう姿を現在のスタイルでアレンジして伝えればいい。しかし現在は、中庸な、自主規制がかかったようなアイデアが通ってしまうのだ・・・。結果として鹿児島は凡庸な、クールな街になろうとしている。デザインに携わっている者が中心になり、もっと暑苦しい街に(いい意味ですよ)していかなくては!

Comments: 9 comments

  1. とうぼう

    このパンフの表紙
    イラストは福岡の西島伊佐雄さんだと思います。このタッチのかごしまのポスター(1964)国鉄で作成されたモノとよく似ています。1978アイデア記念特大号NO.150に掲載されています。

    それと、ブレーンの2012.1月号の60p平成建設の考えに共感を覚えた。
    補足のヒントになれば!FAXします。
  2. ohtematic

    とうぼうさん→
    そうでしたか・・・西島伊佐夫さん、恥ずかしながら存じ上げていませんでしたが、調べたところ、輝かしい功績を残されていますね。かなりツボな方です。今度福岡に行った時に「あかりの館」を訪ねてみようと思います。鹿児島市観光化の方々がどのような経緯で依頼されたのか興味があります。昔の方が単純に予算があったのかな・・・。逆に方法論があまりなかったのかも知れませんね、そっちの方が良いものが出来るというのは皮肉でもありますね。ファクスも今届きました。有り難うございます!
  3. じつは・・私の実家は鹿児島の老舗旅館でした。皇族をお迎えしたことも。私も若い時代の数年間家業を手伝ったのですが、おそろしいほどに標準化の進んでいる時代でした。つまらない時代でした。泊まるお客も迎える側もクールな近代化を求めている雰囲気でした。

    で、ようやくその波が過ぎ低成長の時代となり人のこころもやっと落ち着いて。

    そういう時代を迎えて改めて思うことは、「ハワイの美しいビーチは人の力で作ったんですよ」「スイスの自然は450年前に一度破壊され尽くされてから人の力でつくりあげたものなんですよ」・・・・なくしたものを悔やむだけでなく創造に向かうことができれば手遅れはないと、思います。
    アートの想像力と現代の人々のあたたかな感性で。
  4. 30分以内で手に入れることができる西島伊佐雄作品は「うまかっちゃん」ですw
  5. とうぼう

    制作依頼元は福岡秀巧社印刷だと思います。
    西島さんは秀巧社をよくされていました。
    鹿児島支店長が市の観光課出身で幅広く鹿児島の観光ポスター、パンフ、観光施設等パンフと
    結構な営業力でした。現在は福岡秀巧社は鹿児島から撤退致しました。宮崎では頑張っています。
    川北電工の介護施設には西島さんの作品が数多く描かれています。
  6. とうぼう

    訂正→秀巧社の仕事をよくされていました。
  7. ohtematic

    むぜ吉さん→
    今年もよろしくお願いいたします。むぜ吉さんにはそんな時代があったのですね。クールに近代化していく様子を間近で体験されたというのは、今となっては貴重ですね。おっしゃる通り、震災が引き金となって(これは、最悪の引き金な訳ですが)低成長下で身の丈の暮らしをする事がテーマとして浮かび上がってきました。鹿児島の場合はハワイとは逆に、わざわざ奇麗な砂浜を埋め立てたりと・・・とんでもない事をした過去もある訳ですが、これからは、きちんと・・・都会コンプレックスに囚われることなく何かを創造して欲しいですね。
    ptaさん→
    うわ〜、納得。しかし、この人恐るべし!ですね・・・これだけ描ければコンペには落ちませんよね・・・・反省。
    とうぼうさん→
    情報有り難うございます。さすがに良くご存知ですね。鹿児島デザインの過去をひもとく企画展!これはとうぼうさんのお仕事だったりして〜。期待しています!
  8. 『近代化と均一化の混同』考えさせられるワードです。
    言い換えると「近代化=東京化」かもしれませんね。
    新幹線の止まる駅で何かその土地らしいものをと探すんですが、
    買ってしまうのは結局、現地の人も食べた事の無い「みやげ用製品(しかも高い)」
    ただ、その土地らしいものって生ものが多くて気軽に買って帰るとこが
    無理なものがほとんどのような気がします。

    どんな田舎に行っても、ダイドーやコカコーラの自販機でいつものようにジュースが
    買える。これが『近代化』ってことなんでしょうかね?
  9. ohtematic

    しば氏→
    いつもコメント有り難うございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
    そうなんですよね、お土産って、観光客用に開発されたものが多い。だけどこうした流れには観光する側も飽き飽きしてきているのでは?と思っています、地元の人が普通に食べているものが一番美味しいと、感じ始めている筈・・・。
    均一化の表現は「均質化」としておけばよかったと思っています。「地方の景色はどこも一緒」という意見は良く聞きますね、ロードサイドのファミレス、紳士服屋、大型ショッピングモール。こうした風景が人の心に何をもたらすか・・・。田舎暮らしを続けていると、やはり都会への憧れやコンプレックスの問題を感じます。一度は都会に出てもいいけど、きちんと帰ってほしい。結局のところ、身の回りにあるものや土地柄に対して「いかに誇りを持つ事が出来るか?」なのではと思います。それが第一歩ですね。近代化はもう終わったから、次のステップへ!