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date 2012.1.13
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南日本新聞「南点」を振り返る(05)

南日本新聞「南点」を振り返る(05)

昨年、南日本新聞に掲載された「南点」(全13回)を振り返ってみようと思います。約800字という制限の中で言いたい事が伝わったのかどうか。読み逃した方々へ向けて、全文と補足説明を本ブログで紹介していきます。
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立派な家

 私が暮らす日置市吹上町に「立派な家」がある。車中から眺める度、心を奪われている。とはいっても高級感のある住宅でもなく、タワーマンションでもない。こじんまりとした母屋と、同じ様なスケールの蔵が二棟並んでいて、全て瓦屋根の木造。手前には井戸、適度な大きさの水田と家庭菜園、背後には照葉樹の森と杉林が広がっている。
 私の様な素人がパッと見ても「自給自足に近い暮らし」が実現されている事が理解出来る。何よりもそのスケール感が丁度いい。 電気だけはやむなく引いているのだろうが「暗くなったら寝ればいい」そんなメッセージを静かに発信し続けている様だ。
 このように本来、庭というのは食糧とエネルギー、更には建築材料をも確保出来る重要な場所だったが、 近代国家を実現するために日本人は「庭とそれにまつわる知恵」を放棄していった。集合住宅における効率的で便利な暮らしが、経済発展という目的のために正当化されてきた。「誰かに依存する事」によって自由な時間を得て、様々な仕事が生み出された。そうした構造を軸に奇跡的な発展を遂げてきたのだ。
 しかし1993年をピークに国際競争力は下がり続けている。更なる上のステージがあると信じてハコモノや道路を造り続けた。こうした全てのツケが、東日本大震災であぶり出される結果に。「経済発展しなければいけない」という幻想は、生理的に信じられなくなっているのに「お金がないと暮らせない」という矛盾を誰もが抱えている。
 例えば「自給自足度の割合に応じて税金優遇措置がある」という価値観にシフトする。昔の様に、お金がなくても暮らせる社会に一人一人が立ち戻ろうとする事で、国家の無駄遣いも減っていく。
 集合住宅で育った私は、鹿児島に移住して初めて庭の意味が解る様になった。「家庭を築く」という言葉は「家プラス庭」という、日本人の「身の丈に合った暮らし」を差しているのではないか。

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お正月のNHKの番組で「里山資本主義」という言葉を初めて知りました。放置されている山の恵み、あるいは廃材を使って、食糧やエネルギーを確保したり、観光産業を生み出したり。まさに今、そんな時代を迎えているのだと思います。

Comments: 8 comments

  1. とうぼう

    足るを知る者は富む
    欲を出さないで自分の境遇に満足できる者は、たとえ貧しくても、精神的に富んでいるということ。

    近年、気になっていることだ
  2. ohtematic

    とうぼうさん→
    そうですね、僕は偉そうなコトを言っている割に、まだまだ欲しいものが多くて困っています・・・。
    枯れる、というのとは別次元の問題ですよね。
  3. 今まで物欲至上主義でしたからね。
    自分も欲しいモノを本当に選んでいったら、捨てるものの方が多いと気付きました。
    最近ブームの断舎離の考え方はわかるけど、本にするまでもないような気もしますし。
    トレンドも消費活動を促す為であって、本当の原点を見つめ直せば携帯ですらいらないんですからね。
    便利になることで退化したくないなと気付きます。
  4. 物欲があるうちは物欲に忠実でいいような。
    僕はモノより画力が欲しい・・。
  5. ちょうどこんな対談を見つけました。
    どんな役にたつのかわかりませんが…。
    http://www.youtube.com/watch?v=7fngjJbLM0s
  6. ohtematic

    TIKさん→
    音楽などは、配信が中心になってしまい寂しい面があります。やはり、モノとしての価値、パッケージメディアとしての魅力は捨て難いですよね。僕もイラストレーターなので、みんなが本を買わなくなると生活出来なくなります。最近の節約ムード、エネルギーが中心だと思いますが、全てを質素にする必要はないのかも知れませんね。そういう意味では、まだ若いのかな。
    ptaさん→
    画力!ですね。これは、油断していなければ歳を重ねるごとに上手くなる筈ですよ!技術を磨くという軸ではない、雰囲気重視の人は、いつまでたっても平行線だと思いますけれど・・・!
    しば氏→
    全編見ました!正確に言うと仕事をしながら音声情報だけを聞いていた時間の方が長いんですが。いやあ、勇気づけられる対談でした。背中を押されている様な。やはり、いとうせいこう氏の中央集権の話とか、低水力発電の話とか、もう、自分が考えている事とほとんど同じですね。・・・日本全体がそうなってきているんだと思います。橋下市長も頑張ってるし、徐々に変わって、いい国になる予感がします。有り難うございました。
  7. あの対談のような動きというのは
    ここ10年くらいちょいちょい耳にしてきましたが、
    なんせ中央集権の渦の中の人々の欲望の暴力性が
    それらのささやかな営みの拡がりを相変わらず遮っているようで…。

    ほんとにあの人たちの欲望の底なし具合ときたら…。
  8. ohtematic

    しば氏→
    本当にそうですよね。中央で既得権益と言われている層の人々は、気づかない環境にずっと身を置いて、麻痺しているだけ・・・と思いたい。国や政治に頼るというのは、もう終わりにしたい。疲弊している田舎の方が、みんなが頑張りやすいという趣旨の話は、勇気づけられました。僕が「半農半X」という本を読んだのは2003年。それからもう10年が経とうとしています。ほんと、一人一人が動かないと!