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date 2012.2.20
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南日本新聞「南点」を振り返る(11)

南日本新聞「南点」を振り返る(11)

昨年、南日本新聞に掲載された「南点」(全13回)を振り返ってみようと思います。約800字という制限の中で言いたい事が伝わったのかどうか。読み逃した方々へ向けて、全文と追記を本ブログで紹介していきます。
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感動のタイムラグ

 映画は、とにかく新作を劇場で観るに限る。釣り上げた魚をそのまま船上で食べるのと同じで鮮度が違う。DVDレンタルやBSでの放映を待つのは、そういう例えで言うと缶詰を食べる様なもの。 劇場で興奮した映画の感想を、1年後に「ビデオで観た」と語られても、何かがズレてしまうのである。 今、この時期に作られたということに一番大きな意味がある。最新の映像テクノロジーや演出を楽しむ事は、感覚の新陳代謝に繋がる。新しい価値観が築かれる。これが文化全般の醍醐味だと思う。いわゆる名画と呼ばれるものでも普遍的にカッコイイ場面と、明らかに「今はやらない」古くさい場面が入り交じっていることが多い。それに気がつくか、つかないか。
 私も、とあるSF超大作を見逃して3年が経ってしまった。完全にタイミングを逸したので、今観て得られることは想像以上に少ないだろう。ファッションでも半年経てばセールの季節が来る。しかし最先端を気にかける人の中では、既に語り尽くされたものばかりが店頭を飾っているのだ。
 仕事柄「2011年でなければ作り出せないもの」にこだわっていきたい。今を生きているという実感が欲しい。ただ、現在はインターネット上で新旧を問わず様々な映画や音楽が等しく並んでいるために、油断をすれば足下は揺らぎ、基軸はあやふやになる。
 この歳になると、映画について友人と語る機会はめっきりと減る。子育て中で趣味趣向が子供にシフトしていたり、仕事が忙しかったり・・・と言い訳は様々。そうこうしているうちに過去の映画や懐メロだけが残像として脳内を埋め尽くし「昔は良かった」などと言い出す・・・こういう事態は何とでも避けたい。それは単なる老化現象に他ならないから。
  既に高齢社会を迎えている鹿児島で「現在の表現」にどれだけの人がアンテナを張っているのか。 この12年間で満員の劇場を体験したのは2-3度。映画館は増える様だが、映画人口も比例して増えなくては!

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Podcastingで、堀井憲一郎さんが毎日の様に落語に足を運ぶという話をされていました。身体性をもって楽しみたいから、という意味合いが強いとの事。僕はここのところずっと、そういう言い方を探していたので腑に落ちました。「身体性」で映画を語れる人って、どのくらいいるんだろうと。偉そうなことばかり書いていますが、自分も映画を見る量は減って来ているんです。ただ、劇場で観た映画に限って、何度も何度も楽しみたいという気持ちが芽生えることは確か。DVDやブルーレイを買う映画は、劇場で見逃したものではないんです。映画館での体験って、濃い思い出になるから。映画に限らず「嫌いな部分も含めて好きになれるか。」というのがひとつのキーワードではないでしょうか。スター・ウォーズは死ぬ程観ていますが、ツッコミどころは満載です。それはおかしいよね、という箇所まで愛してしまえるのかどうか。「金返せ!」と劇場に文句を言いたくなる様な映画もあるのかも知れませんが、本当にじっくりと作品と向き合ってからでいいと思います。鹿児島でも映画館が増える様ですが、もう今のシネコン形式では上手くいかないと思う。スクリーンを効率よく回すのだったら、寅さんだけのスクリーンとか、ホラー専門とか、SF映画のスクリーンが常にあるようなイメージが希望。スカパー!などの有料チャンネル形式で映画を選べた方が上手く行きそうだと思いますが如何でしょうか。ミッテ10(鹿児島中央駅)とシネマズ与次郎(フレスポ)の映画に、ほとんど差がないのは問題です(ガーデンズシネマは独自の姿勢で頑張っていますけど)。でもあとは、学生向けに2本立て、3本立てとかを安価で上映しないと。僕が最も映画に浸っていたのはやはり学生の頃。お小遣いの範囲で一日中、劇場に入り浸れたものです。ハリソン・フォード特集で「ブレード・ランナー」「ハノーバー・ストリート」「レイダース」の3本立てを観た記憶があります。ウディ・アレン特集のオールナイトとか。こういう楽しみ方を今の若者にも知って欲しい、一本観て帰るという入れ替え制だけでは本当に寂しい。

Comments: 6 comments

  1. 私も映画館派です。
    自宅で見ても落ち着かないと言うか、現実が目には言っちゃう感じがダメなんでしょうか、入り込めない感じです。
    それに、それこそ、今頃「アバター」がとテレビで初めて見た人が喋って居ても、興ざめな感じなんですよね(~_~;)
    マルヤは会員だといつでも何でも千円なので、お茶するくらいの感覚で見に行けるのが、とてもうれしいです。
    シリーズを繰り返し上映とか、ほんと、やってくれたら、見たいし、見逃した感が残念だろうから、客も増える気がするけどなぁ……
  2. 偶然にも先日のタマフルは名画座特集でしたね、

    入場料1,800円は高すぎる。ほんとどうにかならないものでしょうかね。
    昼食がワンコインの時代に、
    500円だったら多少つまんなそうでも見に行ける。
    おもしろかったら何回でも惜しくない。
    料金の設定に黒沢映画商法と同じ匂いがプンプン

    超旧作と新作の2本立てとかいいですよね、
    ベタなところで「隠し砦〜」と「SWep4」とか、
    テキストになりそうな旧作との2本立て、
    これは映画好きにはいいけど、一般の人にはメンドクサイかな〜?
  3. ohtematic

    rieさん→
    まさに僕が見逃したSF超大作が「アバター」だったんです!SF映画って、自動車で言えばF1の様な立ち位置。一般の車に向けて開発されようとしている技術が惜しげも無く投入されるプラットフォームという意味で。新作SFというのは自分にとって特別なのに、なかなか市内に出向けず見逃してしまいました。このコラムを書いた後、ブルーレイでエクステンデッド・エディションを買ったり設定資料を古本で取り寄せたりしましたけど・・・ホント、今さら観たと言っても、人に話せないですよね。鹿児島の場合、映画人口が少ない分、上映期間も短くなりがち、という気がします。おっしゃる様なタイプの映画館が登場する事を期待。マルヤの会員はお得ですね〜
  4. ohtematic

    しば氏→
    名画座、鹿児島にも欲しいな〜。
    料金の問題は、家族がいると余計に膨らみますね。おいそれとは観に行けるものじゃないですよ。そう!500円だとつまらなそうなDVDでも勇気を出して買えるんですよね。そういえば!「宇宙人ポール」の鹿児島上映が決まりました。ようやくです!嬉しい。旧作と新作の二本立て企画も、楽しいですよね。地元のタレントや文化人が選んだ二本!とか、タマフル的にトークショウ付きでやればお客さんは来るかも。
  5. 早くも、ツタヤとかで「ソーシャル・ネットワーク」が3枚1000円の対象になって
    ますね。
    映画の料金の設定をレンタルやCS、BSと競争できるように
    なんで変更しないんでしょうねぇ。

    ポール楽しみですねぇ〜。
    是非感想をブログで!
    お待ちしてます!
  6. ohtematic

    しば氏→
    ソーシャル、は劇場で観ました。あれから1年半くらいかな?それで333円の価値になってしまうのは不思議ですが、この1年半、自分にあの映画の感覚が宿っていたと思うんですよね、これからも。その時間を買うか買わないかという事かな。Facebookもあの映画を観た人とそうでない人は決定的に何かが違うと思うし。そうやって考えながら自分が投資したものを正当化していくのですが・・・映画の料金はやはり高いですね。
    ポールは今からワクワクしています!