音楽図鑑 2015Edition 坂本龍一
「音楽図鑑」は1984年〜僕が18歳の時・・・LPと12inchシングルの2枚組として発売されました。美術学生を目指して勉強していた最中にこのアルバムと出会えたのは本当に運が良かったとしか言いようがありません。坂本龍一のアルバムの中で一枚を選ぶとしたら間違いなくこれですし、「無人島に持っていく10枚」にも必ず入るでしょう。「図鑑」という言葉が何を物語っているか?コンセプトのないコンセプト、というか、ラフスケッチを組み上げて熟成させていった感じ・・・あらゆる音像が一曲ごとに異なった構成で配置され、結果として図鑑を眺めるように、多様な音楽の種類を確かめる性質の作品になった・・・ということなんだと思います。最近では、アンビエントやボサノヴァなど、ひとつのジャンルで括られるアルバムも目立っていますが、これは、教授の厳しさや優しさが織り交ぜられた、多様性に富んだアルバムです。おそらく教授の音楽史の中でも、アイデアが最も溢れ出る時期だったのではないでしょうか。iTunes上では、カテゴライズされにくかったと思われクラシカルとして紹介されていますね。タイトルの要素を抽出してみると、林、森、裏庭、パラダイスなど、いろんな風景が浮かんでくるキーワードが散りばめられていて・・・イラストを描く上で空想の世界を膨らませるのに随分と役立っています。そういう意味ではサウンドトラックなんです。テクノの印象が一般的には強い教授ではありますが、この作品はアコースティックで有機的な部分が目立ちます、もちろん好奇心を駆り立てる電子音も盛りだくさんなんですけれども。今回の「2015 Edition」は、アルバム初収録の貴重なトラックを追加した2枚組、発売当初の2倍超のヴォリューム、HMCD紙ジャケット仕様での発売です。Disc2は「音楽図鑑」を聴き込んだリスナーに対するボーナス的な要素というよりは、新たなアルバムとしてもう一枚完結していると思えるような内容でした。すでにCD化された段階で購入している方にとっても、買い直しに十分すぎる内容となっています。最後に、帯に書かれた「僕たちは、ヒトリ。」という名コピーが、当時高校生だった僕をどれだけ勇気づけてくれたか?絆やつながりが前提となっている今だからこそ、常に確認し続けていきたいのです。