日比野克彦展「日々の旅に出る。」
奄美大島行きのフェリーに乗船する直前、霧島アートの森に行き「日比野克彦展・日々の旅に出る。」を鑑賞してきた。僕が美大を目ざして猛勉強をしていた時、日比野克彦はスーパースターの様に登場した。彼はまだ芸大の大学院生だったから、芸大に合格した高校の先輩に頼み込んで、彼の作業場を見学しに行ったりもしたのだ。同じアトリエの中にはタナカノリユキさんや内藤こづえさん(現・日比野こづえさん)も机を並べており、「何なんだここは!」と・・驚愕と感動と、落胆と、いろんな感情が入り交じった事をはっきりと覚えている。「芸大旋風」などと出版社やマスコミもはやしたてていた時代。伊勢丹美術館の「七福神展」や、イラストレーション誌の31号に当時、どれだけ影響を受けたことか。それまで、几帳面な体質だったグラフィック業界に言葉は悪いが殴り込みをかけた様な気迫があった。それまではエアブラシアートの様なきっちりした世界観が一世を風靡していたから、日比野の段ボールアートは革命だったのだ。僕を含め、当時のグラフィックに関わっている人は勇気を与えられたと同時に、殆ど物まねをせざるを得ない状況に陥っていたのではないでしょうか。僕にもそうした日比野克彦感覚からの呪縛の時代があり、そこからどうやって自分のスタイルを築くのか、相当模索しました。今で言うと、村上隆と佐藤可士和を足して倍にした様な存在だったと思います。
前置きが長くなってしまったのですが、そんな日比野氏の作品群を久しぶりに見て、コレだよコレ!と当時にタイムスリップ。特に80年代の作品はほとんど記憶していました。最近のドローイング作品や、鹿児島で行ったプロジェクトの作品は正直なところ、前者に見られる「おもちゃ箱をひっくり返した様な」楽しさはなく、しっとりと落ち着き払った世界観でした。これも時代の流れなのでしょうか。