連載・幻想のスロウ・ライフ(6)
04 豊かさの基軸1
経済成長や景気の話が、毎日の様にニュースで流れているが、僕は常にこういう風に考えている。「従来の様な経済発展はしない」。
では、そうした中で、どうやって自分や家族を支えるか。鹿児島のローカル番組で、景気について、このように答えていたおばさんがいた「私は景気が悪くなっても自然の恵みだけで生活していく自信がある」。
これは間違いなく、自分の家や庭、井戸、田畑などを持っている人の強みである。常に、「対自然」というスケールを用意しておく。自給自足のスタイルが最も人間的に自立しているという価値観に戻った時、鹿児島は都市部よりも未来を先取りしていると言える。同時に高齢化社会ではなく、既に高齢社会を迎えていることも、都市から考えると未来の事である。そうした社会で暮らしていると、思いも寄らないサービスを体験することになる。「8キロも離れた場所から洗濯物を取りに来てくれるクリーニング屋さん」には驚いた。「高齢者を送り迎えする美容室」は、このあたりでは当たり前になっている。高齢社会、未来社会で暮らしている事を、しばしば実感できる。
学生の頃、民俗学で「電車の自動券売機」の授業を聞いた。自動、と言っているが目的地を路線図で確認し、お金を投入してチケットを買う。昔は駅員に「○○まで大人1枚」と言えばチケットが買えた。どちらが便利なのか、というものだ。機械化されたものを再び人の手に取り戻す事も、重要なポイントだ。
「従来の様な経済発展はしないが、より高度な豊かさの基軸を探っていく」
そのために、景気に左右されにくい事柄を、毎日少しずつでも自分の中で高めていく作業が必要だと思う、それが次の時代への準備に他ならない。