ダグリ岬ユニオン
三箇日も終わろうとしております。皆様、ゆっくりと過ごせましたでしょうか・・・。マティックはあれこれと用事があり、机に向かっている事が多かったですね。
1/1から勝手にお正月スペシャルとして、南日本新聞夕刊に掲載された「スケッチ備忘録」の記事を転載しています。
***
2058年、 九州全域には「空電」と呼ばれる新世代交通システムの線路が張り巡らされている。南部で最も大きい駅が、この ダグリ岬ユニオンである。発車して間もなく、急勾配を駆け抜けるスリルを味わう事が出来る。そのため、直接この駅で電車を待つ人もいるが、大抵の乗客は事前に腕時計に組み込まれたナビで行き先を入力し、電車の到着を待つ。停留所や時刻表といった概念はもはや無く、刻々と変わる自分の位置に空電の方が追いついてくるのだ。予約した場所で待つ必要はない。必要最小限の確実な配車、そして無駄のないルートが自動設定されるこのシステムは、全国に先駆けて九州が導入した。
ダグリ岬ユニオンから放射状に広がる線路は、ほどなく分岐して、様々な方向へと続いていく。最も利用者の多いルートは「鹿児島環状線」と呼ばれており「ダグリ岬ユニオン~大隅大川原~稲葉﨑~上樋脇~吉利~前之浜~大隅高須~ダグリ岬ユニオン」を平均2時間40分で一周している。空電は防水仕様になっているが、スクリューがついている訳ではない。そのため、前之浜から大隅高須への海路はトッピー・エレメンツ2.0という高速船に牽引してもらう。また、19世紀後半に次々に廃線となった宮之城線、山野線、大隅線、志布志線、南薩線といった路線も、空電として復活を遂げている。