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date 2010.7.5
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いろんな事

いろんな事

梅雨の合間に真夏の雲がのぞく鹿児島です。
制作の話。時間をかければイイというものではないのかな。学生に通常よりも長い時間を与えて課題をやらせたところ、時間がない場合よりも、何かが足りない作品が仕上がってきた。自分の場合もそうだ。妙に手離れが悪い仕事、或いは締め切りが最初から曖昧な仕事というのは、ズルズルと何かが抜け落ちてしまう。また、自分が友人に編集するCDというのも、短時間で作ったものはウケが(比較的)良く、作り込んだものは無視されてしまいがちだ。結局、物事には適正な時間が設けられていて、それを逸脱すると「違った何か」になってしまうんだろう。例外もたまにはあるけど。
話はかわって、「社の方針が変わって、これからイラストは全て買い取ることになったが、引き受けてくれるか」という電話がかかってきた。断った。僕が断った事で、恐らく若者に仕事が流れた。しかしこの若者が「買い取りオーケイです」と言ってしまったら、それでお仕舞いなのである。買い取りというのは、以前にも書いたんですが(1)(2)(3)(4)、フリー素材になってしまうという事を意味する。こうした流れが業界全体に及ぶと、当然自分の仕事も、その若者の仕事もなくなっていく。今、音楽を始めとして「デジタル時代の著作権」についての議論が重ねられているが、僕はこの20年以上、イラストレーターとして先人が作り上げてきたシステム(適正なルールと価格)のおかげで生活出来ている。先行き不透明な時代ですが、適正な時間と適正な価格というのは大切にしたいと思う。

Comments: 9 comments

  1. gomanoheya

    ツイッターから飛んできました。
    私は印刷会社に勤務しておりますが、本来制作したデータは渡せない事になっています。しかしクライアントから「他の印刷会社はデータくれるよ」という圧力に屈して渡さざる得ない状況になってしまっています。
    誰かが無視したルールがさも正論のように扱われ、権利を侵され、仕事がなくなっていく。なぜ皆気がつかないのかと腹立たしい思いをしていました。
    今回のブログを読んで、私どももしっかりと権利を守れる強い会社にせねばと気合いが入りました。ありがとうございました。
  2. 買い取り……残念ですけどね…

    とあるCMの楽曲を制作したのですが、最初は1回だけの話が、数年にわたって何度も使用されていました。
    最初は言われるがままのギャラで納得したのですが、
    数年間も使用されてしまうとちょっと………な気分になってしまいました。
    幸いと言うか、それからは全然CMの話がなくなったのでよかったんですけどね…

    余談ですが、「およげたいやきくん」の子門正人氏は、
    レコードがあれだけ売れたのにも関わらず、買い取りだったために
    ギャラが5万円だけだったとか。
    もっとも、後にレコード会社から100万円を頂いたとか…それでも安いけど(-_-;)
  3. 印刷会社の営業の立場からすれば「イラストで食べる」ということについて
    想像すらしたこともないし、ましてや印刷業の利益しか頭にないので
    使いやすい素材くらいにしか考えていないと思います。
    さらに素材CDの氾濫がそれに拍車をかけているのでしょう。
    初期のころ安いチラシ程度につかえそうなカットが
    ニーズに合わせてあたかもオーダーで描いたような作品レベルまで行き着いて
    しまった事もとても大きな要因だと思います。
    (しかも中国産、韓国産まであります。今時の流行の作風で)
    一概には言えないかもしれませんが、
    地方の制作現場では素敵なデザイン書籍なんかより素材CDの充実のほうが
    重要になっている感じがします。(絶望的!)
    違うお店のチラシに同じイラストなんて事もよくあります。
  4. ohtematic

    gomanoheyaさん→
    コメント有り難うございます!やはり、不景気の影響で経費削減、という理由があるのかも知れませんが、クライアントに対しては丁寧な説明が必要だと思います。業界全体が収縮してしまっては、お互い生きていけなくなりますからね。こういう志を保つのは体力がいると思いますが、がんばって下さい!
    Katsuyaさん→
    知り合いの音楽家は、請求書に使用期限を記しておくとおっしゃっていました。普通、1年だと思います。こちらから権利や金額の話をするというのは、勇気がいる事なんですが、40を過ぎた頃から普通に言える様になってきました。子門真人氏の話は僕も聞いたことがあります。
    しば氏→
    「貸しポジ系」の話は、僕のところにも来ますけど、全部断っています。そうする事で自分を保つしかない。素材CDっていうのも、スゴイ話ですよね。中国、韓国に押されているのか〜。確かに、違うお店や企業で良く見かけるキャラクターがいますよね。アイツ、罪深いキャラだな〜。絶望的な状況の中の、一筋の光を信じて活動していくしかない!ですね。
  5. 会社が購入した素材イラストは一見イマドキ風のツボをおさえた
    オシャレイラストなんですが、微妙にテクスチャーやピンクの感覚が
    中華風、韓流で(中国雑貨のピンク・チマチョゴリピンク?)、
    不意に瓶のイラストのラベルにや背景の看板にハングルが入ったりして判りました。
    著作権アザーサイドですね。

    多分、真矢みきは全ての人にメッセージを送っているんだと思う。
    「あきらめないで」

    制作データは「緊急だから」と印刷会社が手配して支給されること多々ありました。
    県内の仕事(制作者も)は県内の印刷屋を回遊してるので、
    個々の会社というより県単位でデータはクローズドになっているかも…
    ある意味おおらか?助け合い?馴れ合い?
  6. 最近はISO関連で厳しくなってるみたいですけど…
  7. ohtematic

    しば氏→
    お茶石けん、このあたりでも売れてるみたいですよ!凄いな真矢みき!ついでに戸田恵子もスゴイ!
    すみません、そこに飛びつくんじゃなかったですね。昔は、緊急だからという事で近所に住んでいる人に頼んだ筈なんですけどね。密度にもよりますが、半日あればオリジナルを仕上げますけどね〜。フリー素材系って、やはり観る側にとっては不幸な場合が多いと思うんです。そうじゃなきゃいけない。野菜や肉だって、生産者が解る時代ですよ。トレーサビリティがデザインの世界でも厳しくなればイイなあ。県単位でデータはクローズド。これもスゴイ話ですねしかし。
  8. イラストレーターを紹介して、という連絡がごくまれに来たりすることがありますが(まさに現在)、初対面でとか電話でいきなりとかだったら、まず断ります。
    信頼できる人だったら、速攻で対応。

    相手もわからず紹介するということは、イラストレーターさんを放り投げて渡すようなことだと思うし、デザインや印刷の仕事に関わっている人以外はほとんどが「一度頼んだのはすべて(データごと)もらえる」と思っているからです。
    もちろん仕事慣れしていらっしゃる方は、そんなこと口にもされませんが。

    品質管理のこと、著作権のこと、イラストやデータの再使用のことなどなど、理解できる人とだったら安心して仕事できるので、やっぱりどんなにコミュニケーションが取れた気になっている現在でも、言うべきところは言いましょう。
    「きちんと断る」ということで「あ、ちゃんとしてる・・・ちゃんとしないと!」と、あらためて話を各方面に通してくださる方もいますよ。

    しっかりとした考えのあるイラストには力があります。
    私も大寺さんをはじめ、数名のイラストレーターの方々に助けてもらって、デザインできています。
    双方の間に立って通訳者として伝えられるよう、さらに気を引き締めてまいります。
  9. ohtematic

    はなさん→
    非常に力強いお言葉です!実際、イラストレーターの立場からすると、はなさんの様なデザイナーが立ってくれることでかなり救われるんです。マネージメントの部分は苦手ですし。デザイン作業だけをデザイナーの仕事としてやっていう人もいらっしゃいますから助かります。逆に、僕をデザイナーだと勘違いして仕事が来るケースもありますね。こういう場合は、デザイナーを立てて欲しいとお願いする事になるんですが、なかなか解ってもらえません。最初の段階で理解されない場合は断った方がいいんですよね。おっしゃる様に、きちんとした姿勢を業界全体が持ってくれば、周囲も変わってくる筈ですね。馴れ合い、助け合いの感覚におぼれがちですが、結局、それでは世の中も鹿児島も良くなりませんね。デザイナーとして、通訳者として、これからも頼りにしています!