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date 2012.5.14
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石垣・before_after

石垣・before_after

お向かいさんの石垣が取り壊され、新しいブロック塀になった。歴史のある石垣で、山から沸き出す水もあるために、カニが沢山住み着いていた。自宅周辺の観光名所として、友人が遊びに来る度、この石垣へと案内していた。カニは、大変珍しい生き物だから、都会から来た人の殆どは驚きの表情を見せて、30分以上も観察したり、写真を撮ったり、木の枝で穴をつついたりして遊ぶ事が出来る。田舎で生まれ育った人には、残念ながらこの感覚はない。
お向かいのおじさんは、もう80歳を越えており「人生最後の仕事として石垣をブロック塀に変えたい」という希望がかなり前からあった。話を聞くたびに「この石垣のままがいいですよ」と答えていたのだが、やはり防災面などを考えると石垣は危ないのだそうだ。そして、写真の様に、奇麗なブロック塀へと景色は変わった。工事をしているおじさんに「危ないよ!」と怒られながらも、子供と数匹のカニを救出して、自宅の石垣の穴へと逃がしてやった。ただ、まだ冬眠中なので動きは鈍く、きちんと生き延びられたのかどうかはわからない。
こうして、田舎の風景も徐々に変わって行く。ブロック塀にしたのは正解だったかも知れない。僕が今、後悔しているのは、石垣にもいろんなデザインがあるだろうから、80歳を越えたおじさんに「こんなのもありますよ」とアドバイスしてあげれば良かった、という点だ。近所の甑島では、ヤマシタケンタさんが取り組んでいる玉石垣の再生プロジェクトがあり、この石垣群のおかげで、街は素晴らしい景観になっている。吹上では玉石は採れないけど、何か他の答えがあった筈なのである・・・。

Comments: 13 comments

  1. あー、これはかなり残念な仕上がりですね……
    こういうのは都市も地方も問わず共通なのかも。
    うちの近所もじわじわと味気ないものが増えてきています。

    「手業に学べ 技」(塩野米松著)に宮崎の石工(石垣職人)の話があります。きちんとした職人さえいれば堅固な石垣を作れるはずですが、職人も職人に仕事を依頼する人も減っていくばかりですね。
    http://www.amazon.co.jp/dp/4480428240
  2. ohtematic

    ishidaさん→
    そうなんです。残念な仕上がりなんです。感情を移入していくゆとりがないというか。
    「職人も職人に仕事を依頼する人も減っていくばかり」・・・まさに、グラフィックやwebの世界でも同じ現象が起きていますよね。何のために勉強してきたのか、その行き場のなさそのものが日本の停滞感に繋がっているのかも知れません。
  3. 味気ないですよね、ブロック塀って。
    ishidaさんの言われるように再生させる、景観を活かすことを考えても良かったのに。
    これからをもっと考えないといけないですよね。
  4. のりポン

    こんにちは。
    ステキな石垣ですね。
    私も田舎育ちで、住んでいるときは、自分の家とか、まわりとか
    田舎臭いから嫌だ!マンションとかステキなところに住みたいと思っていました。
    でも、歳を重ねていくうちに、やっぱり
    あの雰囲気はステキだったかもなぁーと思います。
    今、田舎の実家も、建て直し、写真のような変化をいろいろとげていますが、
    私もアスファルトの上じゃなく、土の上をあるいて生活したいと思ったりするようになりました。
    でも、古いものを安全に残していくということは、やはり高額費用だったりします。昔は、安かったのに、今は、そうすることのほうが、高く付く。
    値段を抑えて安全を求めれば、こういうふうにするしか方法がなかったり。
    おかしいですよね、時代のながれって。
  5. ohtematic

    サイコロさん→
    景観を活かす、というのは、ある程度余裕がないと難しいかも知れませんね。今は、明日を生きる事で精一杯だったりして。日本の街並は、殆どが悲惨な状態です。明治時代くらいまでは良かったのかも知れませんけど・・・
    のりポンさん→
    のりポンさんは、てっきり都会派だと思っていましたが!いい歳のとり方をしてきましたね。
    暮らしの質を変えて行こうという動きは、震災以降特に高まって来ている様に思います。もし、今住んでいる家や場所で、自分の責任が及ばない様な要素があるとしたら、それを自分の手に取り戻していく事が必要なんじゃないかな。昔の人は、食糧もエネルギーも、みんな自分で作り出していた。住宅は、古くても住み続ける事で寿命は伸びます、多少のメンテナンスは必要だけど。一度、人が住まなくなってしまった家に手を入れるのは、大変です。
  6. レトロフトムゼ吉

    あの〜、この景観的なイカリは脇に置いたとして、、、ワタシ造園とかランドスケープの分野の人なんですけど、この間知擁壁のとこ、水抜き穴(パイプ)が少なすぎるような気が、、、。水捌けのワルい土地になっちゃうかも。地面近くにも何カ所が水抜きが必要だったかもです、はい。昔の石積みのままでしたら隙間から自在に水が抜けていけてたのに〜〜。おら、知らね。
  7. ohtematic

    ムゼ吉さん→
    あ〜、そうですか・・・。カニが沢山住んでいた訳ですから、それなりに水の量はあった筈です。おじさんに伝えておきますね。水抜き穴というのは、パイプでなくても大丈夫なんでしょうか。ドリルで何カ所も穴を開けるとか・・・。
  8. レトロフトムゼ吉

    ドリル程度の穴では小さすぎてすぐ固化した土で固まって穴が穴でなくなるのであまり意味はないわけで。。。とはいえ何か問題があったとしてもそれが表面化してくるのは10年目あたりからなので、(大きな声ではいえませんが)おそらく地主さんは生涯それを知らずにいられると。。。ちょうどその頃のはきっと、ああ、古人の施工って意味があったんだなぁと次世代は気付いてくれる予感してます。またそうであってほしいです。人間は手痛い失敗を経ない限り学習しない生きものですから。。。
  9. ohtematic

    ムゼ吉さん→
    そうですか〜。やはり、昔の人の方が自然現象に対して敏感だったんですね。このブロック塀が崩壊すると、我が家の敷地から外に出られなくなってしまうので、人ごととして片付けられないんです。やはり、今のうちに助言しておいた方がいいですね。
    もう遅いのですが、僕は直感的に石垣の方が安心感が持てます。
  10. のりポン

    失礼しま〜す。
    なっなんで、私、都会派だと思われたんでしょうか?
    ど田舎人です。私も物づくりをしておりますが、
    最近、
    自分は、やはり自然からの影響が強いんだなって感じるようになりました。
    若いころは、拒否していた経験や感覚を、今はすごく必要としています。
    でもそれは、自分一人でそうなったのではなく、
    周りの動きとか情報にもよるのかもしれませんね。
    大寺さんの新聞記事とかも時々読ませていただいておりますが、
    Iターンの方々の意見も読んでいると、小さい頃の思い出が宝に思えてきます。
  11. この生き物の気配がなくなった感じ、とてもせつないですね。
    ドブも石垣にしているだけで生き物の気配があり、実際密かに生活をしています。
    ドブが整備されてコンクリの側溝になった時のあの喪失感ってなんなんでしょうね。

    自然現象に敏感の話。
    多分、開いているチャンネルが今の人間と全く違うんだと思います。
    生活環境で言語化されていない色は認識できないとか。
    http://www.nhk.or.jp/dramatic/backnumber/258.html

    原発のこととか、今やっとチャンネルがまた変わりつつあるのかも
    しれませんね、あっ、それがいわゆる2012問題ってことなのか!?
  12. ohtematic

    のりポンさん→
    失礼しました。勘違いしていたかも知れません。のりピーさんやのりのりさんなど、いろんな方がいらっしゃいまして・・・。
    結局のところ、人間が作り上げた情報化社会の犠牲になっている人が増えてきた様に思います。自然も、それ以上に情報を発信しているんですよね。それを感じ取れるか、取れないか。そのあたりがこれからの生き方に深くかかわってくるのだろうと思います。
  13. ohtematic

    しば氏→
    護岸工事で味気なくなって、生き物がいなくなった箇所を、今度は新しい手法で有機的なカタチに戻したりしている様ですが、これは予算が潤沢にある地域の話かも知れません。田舎の人は、とりあえず、きちっと、綺麗にしておくという、まだその段階ですよね。
    チャンネルの話は、確かにそうですね。昔の人はスケジュール表やカレンダーを見ずに、植物や農作物の生育状態、或いは太陽の高さ、星の様子などで時間を感じていた訳ですから。そういうチャンネルを一人一人が取り戻す時代なのかも知れません。自然は、勉強するよりも体感する方がてっとり早い。そういう意味でも田舎に人が増えて欲しいですね。マヤ歴?のカレンダーは2012年移行の分も見つかったそうですね。