スキャナー・ダークリー
1982年公開の映画「ブレード・ランナー」は革命だった。僕たちの世代で、基本的に「SF系」の人たちはおそらく今も、その衝撃の上で生きている(そうならざるを得ない)。ビジュアル、ストーリー、音楽や映画自体の持つムード、これを超える作品は未だに見あたらない。原作者フィリップ・K・ディックの描くシリアスな未来像を、今回はリチャード・リンクレイターが映像化した。彼の作品は2002年の「ウェイキング・ライフ」を鑑賞しただけだったが、今回はそのスタイルを更に突き詰めた仕上がりとなっている。実写で丸ごと撮影・編集し、一コマ一コマをすべて画像として描き出し、パソコンで変換、また映像に戻す・・・という手法だと思う、今までに観たことのない映像。「トータル・リコール」「マイノリティ・リポート」などと同じく、ストーリーもディックお約束のパターンで、捜査官が自分を疑う部分が基軸になっている。僕は「自分探しの旅」よりも「自分を疑う」事に興味を感じる。そうしたリアリティが、ディックが多くの読者を獲得している部分だと思う。映画の話に戻ります。今回はアニメの質感が「薬物中毒」という現実との距離をうまく表現しているし、練られたシナリオは全体像をラストシーンまでうまく隠して誘引していく。「マイノリティ・・」も近年のスピルバーグ作品の中ではかなり好きなのですが、この「スキャナー・ダークリー」もディックファンのみならずSF系の皆様にオススメの作品です。
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Studio Voiceで読んだのですが、今年「ブレード・ランナー」の「真ディレクターズ・カット版」が発売されるそうですね!これまでとはまた違うヴァージョンらしいですよ!