イラストレーターという仕事を守る(1)
バブル期に大手企業が主催したキャラクターの公募展で賞を受けた事がある。キャラクターの版権は企業に移されるが、その企業が発行する雑誌に掲載されるなど、ある程度の仕事が見込まれていた。しかし〜勿論自分の力量不足も原因のひとつだろうが〜仕事は一度きり、連絡は来なくなった。自分の思い入れがあまりにも強いキャラだっただけに、権利を移した事を後悔した。キャラクターはその時点で死んでしまったのである。企業はどのような思いで公募展を開催したのか、今となってはその趣旨を確かめるのは難しい。バブル期に有り余ったお金をアートやデザインに注ぎ込む風潮があった事ははっきりと覚えている。しかし、その運動を加速させたり、育成していく部分まで果たして考えられていたのか疑問が残る。
僕は後日、その企業に出向き自らの思いを伝えた。このままキャラクターが死んでしまう事は、自分の生死にも関わる事だと。このまま、何も動かないのだったら権利を返して欲しいと。応接室で1時間ほど話し込んだ結果、僕の主張は理解された。書面での手続きもその場で行われたと記憶している。