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date 2008.11.29
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イラストレーターという仕事を守る(3)


描いたイラストについて企業から「譲渡契約にして欲しい」と言われる事がある。これまでのイラストレーター生活の常識から判断すると「おかしい」と思わざるを得ないので極力、お断りしている。通常、イラストというのは一度の「使用権」を売っている。二回目以降の使用については「二次使用料」を請求する事が出来る。場合によって異なるが、おおよそ初回の使用料の30%程度。これはデザイン業界の基本ルールである。ところが不景気の影響なのか、このルールが譲渡契約によって崩れようとしている。つまり、これまで描いてきた様々なイラストレーターの様々な作品が、その企業内でフリー素材になってしまう恐れがあるのだ。僕はこのようなケースに遭遇した場合「このままではイラストレーターという職業自体が世の中から無くなってしまう」という説明をし、企業やクライアントに理解を求めることにしている。限定された仕事のために思考され、生み出されたイラストであるところに価値があるのだ。そうでなければ成果物自体の意義もなくなってしまうし、当然クオリティも下がる。「モノを造り出していくこと」についての価値が揺らいでいる。イラストレーターという仕事を、自分できちんと守っていきたいと思う。

Comments: 14 comments

  1. yasuhara

    その通りです。
    頑張ってください。
  2. 深く同意します。
    これはザイン料もなし崩しにこの傾向が強まり、こちらでも悩みのタネになっています。私もデザイン事務所の経営者として頑張らなければならない局面です。
  3. ↓デザイン料のまちがいです。ごめんなさい。
  4. yasharaさん→
    有り難うございます。勇気が出ました!
    kikuchiさん→
    大変ご無沙汰しております。コメント、有り難うございます!デザイン料についても、そんな事態になっているんですね。どうやって自分の仕事を守るか、デザインに関わる一人一人の意識が大切になってきていますね。
  5. マンガオ

    おひさしぶりです。この間は会いに行く事ができず残念でした。前回 コメントを送った後に文に失礼な表現があったような気がして…自分は言葉足らずで表現も下手なので…。まずはそれをお詫びさせて下さい。今回も論点がずれているかもしれませんがコメントさせて下さい。私の場合 セミプロでもなく現在100パーセントアマチュアの絵描きなワケですが…それでも友人やバイト先の人の紹介でたまにイラストや似顔絵の仕事をいただきます。こまるのが「絵を描く」という事をボランティアと勘違いしている方がいる事です。もちろん それには誤解を招いてしまっている私にも責任があるのかもしれませんが…。ひどいケースになると「きちんと報酬を払う」と言ったのにも関わらず こなした後 「無料でいいでしょ?」と言われまして…。結果 その人は私のイラストで大学のサークルのTシャツを作って売っていました。(もちろんその人とはそれきりにしました。)
    スケールこそ違うものの 大寺さんの話にすごく共感しました。絵や描き手の気持ちをふみにじるような事は本当にやめてほしいです。大寺さんにアドバイスをもらい以前より本を読んで…それでもちょっとわからない所があるので次回 よろしければ教えて下さい。今回 このお話が聞けて(読めて)すごくありがたかったです。
  6. あー!デザインデータだけを欲しがるところってあるんですよね。
    デザインは持ち込みで印刷だけしますよってとことか。
    その瞬間はよくても、後から気持ちが曇るのでゼッタイ受けません。
    いいものって何度も使いたい、社会に求められる魅力があるわけですから、その「元」を生みだした人にも再度使用するたびにまんべんなく必ず還元されるべきです。
    断るべきものはしっかりと断る。
    すると、不思議なことにきちんとした人に出会える。
    ここはデザイナーも頑張るところだと思います。
  7. *こむぞう

    マティックさんお久しぶりです。元、北千住の会社の営業マンです。
    出会ってから10年。mixiでマイミクになっていただいてからも一年以上経ちますが、今になって初コメなこと、お許しください。。。。
    僕も印刷会社の上がりなので趣味程度でデザインをやっているんですが、知人の勤めている大手自動車メーカーHの販売店から納車した車の後部ガラスに貼るステッカーのデザインのオファーが来たので3種類ぐらいそれなりな見本でシール5枚ぐらい作りました。試作品を見せたところそれなりに喜んでもらったのですが「まだ今までの在庫があるから」といって話が凍結してから既に3年。自分的には「多分お気に召さなかったんだろうな」とちょっとがっかりしてました。そんなある日、信号待ちをしていたら前に停まってるH車に僕の作った試作品ステッカーが!僕の場合、データは渡してないのでおそらくその試作品の何枚かが実際に出回っていると思います。ただ、値段交渉なども全くしてなく気に入ってはもらえなかったのじゃないかと思うと今更クライアントに言い難いところがあって、、、なんか凄い悔しい思いです。だからマティックさんとはスケールが全然違うけど深く同感しました。
    僕の場合、どうするべきだと思いますか?クライアントのズルさに納得いかない反面、作品として気に入らなければ何度でも作り直してでも最終的には採用してほしいとも思うのです。
  8. マンガオさん→
    御無沙汰しております。コメント、有難うございます。もし、アマチュアという自覚があるのなら、ギャランティをもらう必要はない訳ですよね。自分のイラストが広まれば、それでいいという姿勢を貫くべきでしょう。でも、もしプロフェッショナルを目指しているのだったら、間違ってもアマチュアという表現を使うべきではありません、しかも100%だなんて・・・。新人であっても、看板を掲げて、堂々と営業を開始するべきです。国家資格がある訳でもなし・・、イラストレーターという仕事は自己申告制なんです。自己暗示制とも言えるかな・・・。草野球なのか、プロ野球なのか、メジャーなのか?どこの球場で自分がプレイしたいのか、きちんと計画し、勉強しながら前に進んでいく必要があると思いますよ。この話、長くなるので、直接会って話しましょう!
    はなさん→
    以前に、はなさんが増刷も含めて管理しているという話を聞き、感銘を受けました。僕はイラストレーターなので、入稿した時点でひと段落ついてしまうクセがあって・・・。でも本当はそれではいけないんですよね。書籍の場合、売上げに応じて作家には印税が入りますけど、大抵の場合、装丁家は最初のデザイン料のみですよね。このルールは悔しいです。
    こむぞうさん→
    それは、悔しい思いをしましたね・・・。おっしゃることは解るのですが、こむぞうさんの文章の最初にある「趣味程度に」という部分が気になります。そういう姿勢が、相手に伝わってしまったのかも知れません。やはりプロ意識をきちんともたないと、相手は「サービスでやってくれる」と勘違いするんでしょうね。プロになれば、多くの場合、最初に価格の交渉が行われます。そして、自分の場合、何度か仕事を途中で降りた経験もあります。これ以上やっても、お互いのためにならないと判断した場合です。「話がきた以上は責任を持って最後までやり抜く」という姿勢も、相性次第では意味がない場合があります。ちょっとおかしいと思った瞬間に、イイ作品は生まれなくなると思っています。
  9. マンガオ

    ありがとうございます。私が申しあげたのは「絵による収入が…アマと変わらない」という意味だったのですが…いえ それでも確かに大寺さんのおっしゃるとおりです。そこの意識からすでに「自分を諦めている」と変わらない表現でした。すみません。最近 3点 似顔絵の依頼をうけました。大寺さんの「む展」でのアドバイス以降 ギャラの発生しない仕事は断る事にしました。1件は支払う意志が感じられなかったためお断りしました。自分はいただける仕事の似顔絵の割合がすごく多いです。(そりゃそーだろって感じですが)似顔絵での収入はもっとふくらませる自信があります。ただそうなった時…これはかなり以前に大寺さんにお話していただいたのですが…似顔絵屋になりたいのであればデパートとかで描かせてもらえばいい。ただそれだと何かそこでストップしてしまう気がします。ネット上で似顔絵だけを引きうけている方 似顔絵を媒体としてイラストもてがける方 本当にイラストレーターという職業の分野は幅広いし自分が一体どこの分野に当てはまるのか…。やはり私もお会いしてお話したいです。(しかられちゃう覚悟です。)スケールもレベルも違ったのでブログのお話の真の意味を私は理解できてもいなかったかもしれませんが…それでも(1)のお話は大変感動しました。お返事ありがとうございました。
  10. 『広告』や『SPツール』におけるデザインやイラストの活用が、経済活動の文脈でしっかりと制作者によって語られることが少なかったことが問題の原因のひとつではないでしょうか。特に地方では。
    観念的、感情的な部分で語られることのほうが多いような気がします。
  11. マンガオさん→
    デパートで似顔絵を・・という話・・・前後の会話を覚えていませんが、一対一の仕事であれば、デザインの領域、つまりイラストレーションではありません。画家に近いと思います。デザインは、不特定多数の人に同時発信する場合がほとんどで、紙媒体、web、様々なメディアに乗せる事が大前提です。和田誠さんなどは、似顔絵を沢山描いていますが、いわゆる似顔絵描きではありません。そのあたりから勉強ですね。イラスト専門の学校に通ってもいいと思いますよ。ゆっくり話をしたいです。
  12. ptaさん→
    なるほど・・・。話がそれるかも知れませんが、鹿児島の場合は、近代絵画での実績が、今でも美術シーンをリードしているところがありますよね。そういう実情も関係しているのでは。鹿児島市民は、市立美術館をもっとオープンな意味合いを持つ施設に「建て替え」する陳情書を出す権利があると思います。金沢の方法論、純粋に羨ましいです。
  13. 金沢21世紀美術館、十和田市現代美術館等、開かれたイメージの美術館いいですね。ぜひ行ってみたい場所です。鹿児島の場合は"集いの場"としての機能は残念ながら感じませんね。近代の美術貢献に関してはひとつの軸として十分活かせる素材だと思います。・・話ずれちゃいましたが・・
  14. ptaさん→
    鹿児島の場合は「霧島アートの森」がありますけど、多くの県民にとっては地理的に遠い場所です。鹿児島市内の中心部で、アートやデザインを身近に感じる事が出来ればいいんですけどね。市立美術館と(県立)黎明館・・・どちらも威厳のある雰囲気で、上から目線の提案になりがちなんですよね。