シンポジウム(2)
「デス・プルーフ」の後に、自分が当時聴いていたテープを紹介しました。カセットの背表紙は、いわば僕にとってはキャンバスで、オリジナルLPの印象を損ねないようにロゴを模写したり、或いはインスタントレタリングを貼り付けた事もありました。何しろ、コピー機も一般的にはない時代でしたから。
デジタル配信時代になって、音楽の聴き方は格段に便利になりましたが、失われたものも数多いと思うんですね。こうしたパッケージメディアに記録されている「モノ」としての価値は代表例です。このカセット達もインデックスカードには録音した日付が書いてある。今から28年前だよ〜とか・・・そういう空気や想い出までを閉じ込めているんです。クラブで聴く音楽は主に踊らせる事が目的であるし、カラオケは歌うことが目的、ポータブルオーディオはごくごく個人的。僕が影響を受けたのはどれでもなく「音楽鑑賞」がベースになっている。きちんとしたオーディオで聴くという行為は、僕らの世代が伝えないと無くなってしまうと思うんです。