精神世界(中)
山を登っている。誰だか解らないが、僕の前にも、同じく山を登っている人が1人。岩肌の険しい山だったが、息切れはしない。しばらく歩き続けると、とてつもなく広い頂上に出た。一面の大草原。これまで見てきた風景とは全く異なっていた。僕はそこで、自分が死んだことを悟った。草原の中心には、キノコ雲がある。しかし原爆投下で出来たそれとは異なり、逆再生の様な感じで、一点に向かって雲が吸い込まれている。不思議に思った僕は、前を歩いていた人に「あれは何なんですか?」と尋ねた。すると、その人は「技術だよ」と一言。僕は何の事だか、まったく解らなかった。しかし、原爆の反対という事は、平和の象徴なのかも知れない・・・と漠然と感じた。その雲に引き寄せられる様に歩いて行き、中心部に到着。すると、頭上で天女が舞い踊っていた。綺麗だ。宗教画を見ている様。衣装は、ピンクやライムといった、普段僕が避けている色ばかりであった。そこで僕は「自分は朝鮮半島からやってきたんだ」と悟った。それまで自分は、インドネシアから北上して日本にたどり着いたと、勝手に思っていたのだが・・・。程なくして、自分の体が消滅している事に気が付く。気持ちがいい。自分の意識が、世界全体に帰属している。或いは溶解していると言ったらいいのか。そこで悟った事は、所有欲や、征服欲、ありとあらゆる欲望から解き放たれている事だった。何しろ、自分が全てなのだから・・・。しかし、この感覚・・・世界全体を味わっている時間はすぐに終わってしまった。ここまでは、案内された感じであったが、次は自主的に「意識の旅」に出かけてみた。今まで見てきたものの中に、自分の意識を走らせてみる。家具、机のエッジの部分や、道路、ありとあらゆるものに、意識をスーッと通過させていく。これがなかなかの快感であった。あらゆるものを試した結果、一番気持ちが良かったのは、何と、寺院にある、木で出来た植物の彫刻であった。実に気持ちが良く、寺院の彫刻という彫刻、全ての中に意識を走らせた。ここで僕は、宗教美術の意味を悟ってしまったのだった。こんなに気持ちが良ければ、みんな霊界から集まってくるなあ・・・と。
ハッと目が覚めて、僕は怖くなり、深夜だというのに友達に電話をかけて、喫茶店に呼び出した。1人で眠るのが怖くなってしまったのである。1989年の話。
mimiうさぎ
2006/09/28 00:10
さて、深夜に呼び出したのは誰だったのでしょうか・・・
マティック
2006/09/28 23:49
この夢から半年後くらいに、鹿児島へ移住することを決意したんです。そういう意味では、古い自分と決別した瞬間だったのかも知れません。
深夜に呼び出したのは、「謎の中国人」という呼び名がついていた男です。