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date 2008.6.17
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42歳・孤独について


誕生日ということで、何人かの友人からお祝いのメッセージをもらった。どうも有難うございました!その中には、ネットでしか交流したことのない人も含まれている(最近、小学校では「ネットで知り合った人とは会わない」という極端な授業が行われているそうだが、ネット上の「良い人」と「悪い人」の区別を、実社会同様に出来る体力を教えなくては意味がないと思う。実際、僕の仕事は「会ったことはないが、信頼出来る人」がいるから成り立っている。そういう可能性の芽を摘んでどうするんだろう)。
ここに2枚のアルバムがある。「大橋巨泉プレー・ボーイ入門」。1967年にリリースされたもので、2002年に初CD化された。「八木一夫とオール・スターズ」「シャンブル・サンフォニエット・ストリングス」の演奏の間に、大橋巨泉の語りが入っている(ちなみに・・・プレー・ボーイを目指す為に買ったんじゃないッスよ。)。一曲目「夜のストレンジャー」は、もともとフランク・シナトラが歌っていたものだそうですが、ここでは「イージー・リスニングに近いジャズ」といった風合いのインストルメンタル。大橋巨泉は「オリジナルの歌詞を朗読した後・・・本当だよね。みんな他人なのさ。肉親に用はないんだよ。」と語る。いやあ、素敵です。肉親に用がない・・って、今なかなか言えませんよ。その後「甘ったれちゃ駄目だよ。全ての恋愛はたった一人であるという事から始まるんだからね」と結ばれる訳ですが、昔の大人が普通に持っていた美学がひしひしと伝わってきて、胸を打たれるんです。
また、坂本龍一のアルバム中、最も好きな「音楽図鑑」(1984年)では「ぼくたちは、ひとり」というコピーが輝いていた。少なくともこの頃までは「自分が孤独である事」をベースとした文化があった様に思う。しかし最近ではどうだろうか。「きみは一人じゃない」とか「きみが世界の中心」的な・・・僕からするとまったくもって横暴な感覚が蔓延している。自分探しと癒しの時代、いつになったら終わるんだろう。もう、いい加減に気づいて欲しい。誰かと繋がろうとする気持ち、これは今も昔も変わらないと思いたいが、その前提が大きく変わった。秋葉原の事件も、孤独から出発していれば無かったと思う。「世界の端に住んでいる。そして、自分は無である。」こういう境地を意識したとき、初めて人に優しく出来るのではないかと思います。

Comments: 13 comments

  1. 日付が変わってしまいましたが、お誕生日おめでとうございます!
    孤独についての考察、同感です。初めて鹿児島を訪れて、マテ先生にお会いした際に「孤独を力に変える」というお話を聞いて感動し、僕も一人で活動しよう!と思ってフリーになった事を思い出しました。その後、「そんな事言ったっけ?」とも言われましたが…。むやみに人と繋がったり注目されるより、孤独で居る方が居心地良いと思うんですけどね。
  2. おお〜おめでとう!
    上記の事、まったくその通りだよ。
    「癒されたい」と言ってる女は一人残らず醜いよ。
    「個性だから」という甘えやわがままをいつまで認めるんだろう?
    ワシの専門学校の生徒も今やそんな人間性を改善することから
    始めなきゃならないので、大変だよ。
    今まで、あやつる為にホメてただけなのに、
    まだ「ホメられたい〜」とか言ってる。もう大人だろ?気づけ!
  3. タカタさん→
    有難うございます。何だか偉そうなアドバイスをしてしまった様ですが・・・ご活躍されているタカタさんを見てホッとしているところです。イラストで世の中を変えて行くことは難しいと思いますが、無意識レベルに訴えかけるような孤独感(!)を盛り込んで行こうと思います。
    ダーンサさん→
    久しぶり!先日のTICの展示、観に行けなくてスミマセン。随分と盛況だった様ですね。そういえば、ダーンサさんの活動スタイルも孤独でしたよね。肉体的には学校にいるけれど、精神的には学校に身を置いていないというか。そういう気迫が感じられる学生はあまりいませんね。
  4. おーちゃん先生、お誕生日おめでとうっ!
    めっちゃ、厄年やんっ!(祝っといて、落ち込ませる♪)
    アタシはいっつも1人だべー。(ニャンコは飼ってるけどね♪)
    「たまには誰かと絡みてー!」と思って、最近は1人でBARに呑みに行くようになったよっ!
  5. のりこさん→
    メッチャ厄年です。後厄なんで、もう3年連続で神社に行ってます!のりこさんは、いつも一人なんですね。しかもBARに絡みに行ってる・・・カッコイイなあ〜!
    そういう感覚が表現として爆発する日は近いかも知れませんね。
  6. お久しぶりです。
    お誕生日おめでとうございます!
    シュタイナーの「自我を超越して他人と向き合うことができる時,さらなる自我と対峙する」というのが好きです。
    その時期が,人生7年周期説の中の42歳なんですよねー。
    私はとっくの昔に過ぎてしまいました。。。
  7. ぴかさん→
    シュタイナー、さすがの一言ですねえ。自分の殻を破るのって、なかなか難しいんですけど、イラストについて言えば、あまり好きになり過ぎない事が大切だと思っています。ちょっと自分を突き放してやる感じです。それが出来ないと、多くの場合自滅しますから。
    そういえば西郷隆盛の「無私」も有名ですね。
  8. 遅くなりましたが、祝お誕生日。
    マテさん、ポテンシャルがえらく高いですね〜
    これなら「厄」の方が避けて通るんではないかというほどの勢いを感じます。
    5月26日のブログに「部屋の中で6時間放置されたお茶を飲めるようになった」
    とありますが、肉体的ポテンシャルも相当向上しているように見受けられます。
    ・・・まさに鹿児島パワーの発現・・・なのですかね?
    「自分探し」については数年前の私信でマテさんに指摘されたのがきっかけで
    以来、ことあるごとに考えてはいるんですが、
    もともと「自分探し」という概念自体、持ち合わせてないんですよね。
    「孤独である事が物事の基本」という感覚で私個人はずっと生きてきましたから。
    「きみは一人じゃない」「きみが世界の中心」についても「自分探し」と同様に
    自分の理解の範疇を逸脱したムーブメント?なので無視してきました。
    理解出来ない世代だからと決め込んで諦観してしまう私には
    「もう、いい加減に気づいて欲しい。」と問題提起するマテさんがとても大きく見えます。
  9. Hammerさん→
    コメント、有り難うございます。やはり僕たちの世代は、そういう感覚ですよね。そういえばHammerさんも、孤独オーラが出ています、いや、勿論カッコイイ意味として!恋愛至上主義の文化も、今回の秋葉原事件と繋がっていますよね。木枯らし紋次郎(古〜)の様なイメージで、ひょうひょうと渡り歩いて欲しい。僕の場合は以前にもお話しましたが、若い世代と「絵を通して」接する機会が増えて来ているので、どうしても「自分探し系」は気になってしまうんですね。絵を描いて個性を絞り出していくというよりは、絵を描いて自分を社会に溶かしていく方が意味があると思うんです。これは、自分にも課している難しい問題ですけど・・・。
  10. 「孤独になれる能力。魂を自らの内奥に向ける努力。それによって得る幸福」
    『ロビンソン漂流記』でクルーソーが語るセリフは,絶海の孤島で生きる術を語っているようで,でも実は猥雑で雑音に満ちた現代に生きる者へ向けられた言葉なのかもしれません。
    「円楽のプレイボーイ講座 12章」も大人のエスプリが効いてますよね。坂本龍一「未来派野郎」も大好きです。
  11. yappyさん→
    ロビンソン、伊達に漂流してないですね!さらっと引用出来るところ、さすがはyappyさんです!カッコイイ!やはり孤独がキーワードになっているんですね。昔はプラスのイメージだったけど、今の若い人は、単純にそれが「寂しさ」と直結している。違和感があります。
    円楽の方も、勿論僕も持っていますよ。巨泉に比べると、ちょっと品がない感じが良いですね。それから、「未来派野郎」これもかなり好きなアルバムです。「BGM」と「テクノデリック」が対で語られる様に、「音楽図鑑」と「未来派野郎」も僕の中では対になっています。色で言うと、「BGM~音楽図鑑」は茶色で、「テクノ〜未来派野郎」は銀色です。
    広がりますね、この話題。
  12. はじめまして。
    はじめてコメントさせて頂きます。
    “孤独について”の文面に偶然出会いとても共感を受けました。自分を強くしたい人はまず孤独になるべきだし、自分をやさしくさせたい人は孤独の中に浸ってみるべきだろうと思います。孤独を知っている人は他人の中に入っても自分をなくす事なく、相手をまた認める事ができ、相手に多くを求めないで自分のアイデンティティを固辞できるものだと思います。
    孤独こそ現代を生きぬくための、真のパートナーといっても言い過ぎではないと思います。(辻仁成著「ガラスの天井」より)
    この短編小説を読んだ時まさしくこれは自分が内に思っていた事を代弁してくれたような強い衝撃を覚えました、マティックさんのこの文章にも同じ衝撃を受けた者でした。
  13. ナルさん→
    コメント、有難うございます。辻さんの小説を読んだ事はありませんが、まさに、その通りですね。最近は、家族に対しての殺人事件なども目立っていますが、そこには「一人でない」という甘えがあると思うんです。こういうムードは、マスコミが造り出している無責任な「応援モノ」だけではなく、様々な場面で遭遇します。そんな時に「違う、自分は独りだ」と言い続ける事が大切だと思います。
    僕はあらゆる団体から距離を置く事に、気を遣っています。黙っているとどこかに吸収されてしまう。