ある師匠との対話
鹿児島に暮らして9年目、長電話をする機会がかなり減った。そんな中、定期的に連絡をくれる東京の友人は2名。昨日、その1人である「師匠」から電話があった。最近、携帯電話やインターネットへの興味が薄れてきたという。iPodなどで音楽を持ち出す事にもNO、の姿勢で、場所ごとに異なる音(騒音だったり、自然の音だったり)に耳を傾けたいと述べていた。そして、地上デジタル放送についても、疑問を抱いているという事だった。これまでのアナログ放送では、画像のゴーストも含めて各家庭ごとに「個性」があったと。それがデジタル化され、均一に美しい画像が提供される事に懸念を抱いている。師匠はこれまで、画像や音像の大切さについて、ハード、ソフトの両面から教えてくれた方だっただけに、驚いてしまった。しかし、師匠のこれらの思考〜提言は的を射ている。努力無くして、あるレベルものに触れてしまうと、そこに「楽しさ」の入り込む隙間がなくなってしまう。こうした状態がこれから世界を覆っていくだろう。個性が無視され、信念のない世界。オリンピックの開催された都市、あるいは新幹線の止まる駅は無個性化していくという話を聞いた事があるが、そんな状況にも似ている。師匠は、デジタル環境に(必要以上に)身を置いており、体のスミまでその感覚が浸透している筈だ。しかしその先に何が待ち受けているか、どうやら結論を得た様だった。デジタル社会推進派の僕ではあるが、このようなキャラクターの前では無力になってしまう。鹿児島は、これまで通りのデジタル・ディバイド状態で、化石の様な街として存続した方が幸せなのだろうか・・・そんな事を考えてしまったのである。
Katsuya
2008/08/21 10:45
CDは確かに「音」はいいんですけど、アナログからデジタルに変換する時に削られた音がなくなる事で「臨場感」「空気感」が失せてしまう事にオーディオファンから反発を受けました。
僕がビートルズをCDで聞いたときに妙な寂しさを感じたのはその臨場感が無かったからなんですよね。
今はアナログの音圧を求めるためにわざわざビンテージのアナログコンプを通してミキシングをしたりするほどです。
シンセサイザーもデジタルシンセが普及したときは、
何を聞いてもデジタルシンセの音が入ってたんですけど、
でもアナログシンセ特有の不安定さがデジタル全盛の時代に個性と感じられるようになり、
今でもアナログシンセが販売されていたり、中古のアナログシンセが高価で取引されてたりするんですよね。
山下達郎さんもアナログ環境からデジタル環境に移行するときにかなり戸惑いを感じ、
曲はできてもアルバムの制作が捗らないことがあったりしたそうですね。
結局のところ、デジタル化することは時代の流れにあるんですが、
そのために「個性」が失われていく事に気がつかないのに問題があるのかも。
>鹿児島は、これまで通りのデジタル・ディバイド状態で、
>化石の様な街として存続した方が幸せなのだろうか・・・
大事なのは人と人との触れ合いだと思います。
だって、いくら環境がデジタル化しても、結局はコミュニケーションツールなんですから。
CDはアーティストがリスナーに対してのコミュニケーションの一つだし、
テレビなんかも視聴者に対してのコミュニケーションの一つなんですから。
マティック
2008/08/21 16:07
長文、有難うございます!
音楽は、いち早くデジタルが浸透した世界なので、その恩恵や弊害についての意識が高い様に思います。
デジタル技術をつきつめていくと、アナログの偉大さが解るというのは、経験した人なら誰でも解りますよね。何となく解る、でも構いませんが。ロボットを開発することで人間の偉大さが解ったり。
今、問題なのはそうした「差」が理解されない事でしょうか。デジタル音楽やデジタルアートも、いきなり入り口に入ると、デジタル的なクオリティを自分のセンスと勘違いしてしまう。
デジタルというだけで毛嫌いする大人にも、問題がある。限りなくアナログに近づこうと努力している感覚はありますよね。そういう部分はきちんと評価されないと・・・。
Katsuyaさんのおっしゃるとおり、インターネットもコミュニケーションツールという解釈で留まればいいんですが、諸悪の根源だと思われているフシがある。
Katsuya
2008/08/22 00:35
そうそう、アドビイラストレーターやフォトショップを使えばプロになれるんだと思い込む人も結構いますもんね。
面白いのは、最近の通信講座などでは硬筆、毛筆の受講者が増えてるとか…
>諸悪の根源だと思われているフシがある。
残念ながらそうなんですよね……
知り合いの子供がパソコンを手にしてすぐ覚えたことが、
2ちゃんねるを見ることと、P2Pソフトでゲームや音楽をダウンロードしたこと。
背筋がぞっとしました。
マティック
2008/08/23 23:18
コメント、またまた有難うございます。
毛筆の通信講座が流行っているというのは、デジタル的なものに対する反動という意味合いが強いのでしょうか・・・。CG全盛期にパペットアニメが流行ったりと、対極のものも並行して注目されるのが面白いですよね。そうやって人類全体の文化レベルが上がっているのであれば、いいですよね。
Katsuya
2008/08/24 16:52
そうみたいですよ。
年賀状や暑中見舞いの宛名や文面をパソコンで印刷されたものよりも、
手書きで書いた方がいいと思える人が増えてきたということなんでしょうね。